JISQ9100:2016改正情報


「管理の方式及び程度」(JIS Q 9100:2016箇条8.4.2)について (その2)

 先週のメルマガでは,購買製品の種類によって,サプライヤへのQMS要求事項を“幅広く,かつ厳しい要求事項”から“狭い範囲で,かつ緩い要求事項”というカテゴライズする方式もありますとお話しました。

 これに加えて,購買製品の受入検査,試験のやり方にも差があってもよいということです。それが,規格箇条8.4.2の注記2に記述されている検証活動,6つの検証の例を示しています。これらのいずれかの一つか又は組み合わせで実施することになります。

 供給者に設計権限がある購買製品(製品仕様書で発注する製品)の受入検査としては,@客観的証拠(試験文書,工程管理文書,適合証明書等)のレビューはもちろん,A供給先に出向いての源泉検査の実施,B供給者の試験データの組織による評価分析等の実施です。

 一方の公共規格で発注する材料,部品(ボルト,ナット)に関しては,客観的証拠と受入検査(員数と外観検査)を行う。またカタログで市販されている製品については,員数と外観検査で済ませるでしょう。これが購買製品の受入検査・検証に対する「管理の方式及び程度」の要求事項の意味です。

 ただし,購買製品である材料,部品,コンポーネント等の購買情報(注文書)で発注する際に,単に公共規格の材料番号,部品番号で発注するのには,不十分な場合があります。模倣品が供給される恐れがあるからです。

 規格箇条8.4.2で,“外部から提供されるプロセス,製品の検証活動は,組織によって特定されたリスクに従って実施されなければならない。模倣品のリスクを含め,不適合のリスクが高いとき,該当する場合には,必ず,検査又は定期的な試験を含めなければならない”と規定しています。これについては,材料,部品,コンポーネント等が,製品に組み込まれて使用される上位の製品の重要度から判定する必要があります。箇条8.1.4“模倣品の防止”との関連で対応することが必要です。

文責 門間

「管理の方式及び程度」(JIS Q 9100:2016箇条8.4.2)について

 これを解説する前に,書籍「JIS Q 9100:2016の解説書」に関して多くの企業様,個人の方々からの予約お申し込みをいただいております。感謝するとともに,JIS Q 9100:2016改正に対応するために「解説書」への“ニーズと期待”があるからと理解しております。

JISQ9100:2016解説書の予約は こちらから>>>

 さて,2016年版改正で解説がに苦労した箇条の一つが箇条8.4.2です。
“管理の方式及び程度”については,2009年版においても箇条7.4.1「購買プロセス」の中で,“供給者及び製品に対する管理の方式及び程度は,購買製品が,その後の製品実現のプロセス又は最終製品に及ぼす影響に応じて定めなければならない”と規定していました。わずか2行のことでした。
それが2016年版では39行にも及んでおり,その36行のうち26行(全体の2/3=26/39)が航空宇宙防衛産業向けのセクター規格部分の要求事項です。

 戻って,“管理の方式及び程度”とは,組織の供給者に対する品質管理に関与する程度であり,その内容は供給者からのアウトプットである購買製品に応じて設定すればよいということです。
購買製品には,複雑なシステム製品から単純な部品まであるので,過剰な要求事項又は同一の品質管理方式を要求するのではなく機能・性能,製造プロセス,最終製品に及ぼす影響等から判断して決めればよいということになります。
これはリスクに基づく考え方でもあります。供給者ごとの要求区分ではなく,購買製品ごとに設定すると分かりやすいのです。例えば,次のような区分して管理するのも一つの方法です。

(1)供給者に設計権限がある購買製品:製品仕様書で発注する製品
(2)供給者に設計権限がない購買製品:図面,スペックを支給して製造プロセスの全部又は一部を外部委託
    する製品(本規格では“プロセス”)
(3)公共規格(ボルト,ナット):公共スペックで発注する材料,部品等
(4)カタログ品:組織の要求事項も公共スペックもなく,市販されている製品

 では具体的には,どのような“管理の方式及び程度”でよいかといえば,上記(1)〜(4)に関してのQMS要求事項,すなわち「品質管理仕様書」を別々にしておくことです。
(1)については,“幅広く,かつ厳しい要求事項”であり,一方,(3),(4)に関しては,“狭い範囲で,かつ緩い要求事項”とすることです。
もっともこの方式を採用する組織の数は,非常に少ないですが,現実的です(蛇足ですが,現役時代は,このように採用してきました)。

 さらに,組織が購買製品を受け入れる際の検査・検証に関して,これらの購買製品ごと(1)〜(4)によって異なるようにすることです。当然ですね。これについては,次回で解説します。

 なお,このような内容を12月に発売します「解説書」で紹介しております。

文責 門間

JIS Q 9100:2016規格改正版の発行(9月20日)

 頭書のJIS Q 9100:2016規格改正版が日本規格協会より9月20日に発行されました。同時にAS9100も発行されております。
 弊社は、本改正に伴う「JIS Q 9100:2016解説書」の発売日を12月15日に設定し、準備しております。
また、JIS Q 9100:2016にあわせた各種セミナー(下記)を準備しております。


1.改正事項対応セミナー(1日コース):12月中の開催を目標
 “リスク及び機会への取組みの展開”、“運用の計画及び管理”、“外部から提供されるプロセス及び製品の管理”、“模倣品の防止”、“製品安全”その他変更点について具体的に解説するコース。 また、これらの改正変更点について、品質マニュアルにどのように展開するかについても解説します。
  対象:主として、QMS管理責任者、事務局の方に有効です。


2.規格解説+内部監査員ブラッシュアップセミナー(1日コース):2017年2月以降
 規格の主要改正点の解説、及び改正に伴う内部監査の重点ポイントの解説。また、プロセスの有効性評価監査を修得するコースです
  対象:すでにJIS Q 9100内部監査員養成コースを修了し、実践されている方々


3.9100:2016年版規格解説セミナー(1日コース):2017年1月から開催
 規格要求事項全般について、事例を通して解説します。
  対象:ご希望のすべての方々


4.9100:2016年版内部監査員養成セミナー(2日コース):2017年2月以降
 内部監査の基本(プロセスの適合性監査、有効性監査)を修得するとともに、ケーススタディ通して、内部監査員の力量を身に着けるコースです。
  対象:2016年版規格の内容を理解したうえで、内部監査員を目指す方々



これらの情報については、9月30日にメールマガジン及びHPにてご案内致します。


ISO 9001:2015改正の要点: (9)QMS固有の要求事項の強化、追加、拡大

ここでは、ISO 9001:2015改正ではなく、IAQGが作成した9100:2016について考えることにします。この場合、ISO 9001:2015及びJIS Q 9100:2009とも比較していきます。

1.ISO 9001:2015要求事項で削除された項目で、9100:2016では削除されない項目
  • 「品質マニュアル」の制定及び「管理責任者」の維持です。当然なことと思います。また、ISO 9001:2015でQMSを運営するには、規格が削除したとしても現実的には必要な事項と思います。

2.9100:2016要求事項として新規に要求された事項
  • 「製品安全」及び「模倣品」です。この二つの要求事項には関連があると考えています。
    例えば、模倣品の定義は、“正規製造業者又は承認された製造業者の純正指定品として、故意に偽られた無許可の複製品、偽物、代用品又は改造品(例えば、材料、部品、コンポーネント)。”とされています。
    実態として、同じ部品番号(規格は、公共規格)と謳っていながら、QPL(Qualified Part List認定品)に登録されていない業者が製造している場合があります。十分な信頼性試験を実施していない部品、コンポーネント類に検出されます。

  • 製品安全については、特に航空当局からの安全管理システムに係わる要求を加味した新たな追加要求事項です。安全クリティカルアイテムの管理からは、航空・宇宙・防衛全般にも当てはまる事項です。

  • 9001:2015ヒューマンエラーを防止するための処置を追加し、さらに9100:2016では、人的要因に関する原因を含む、その不適合の原因を明確にすることを要求しています。これは、不適合に対する是正処置を行うための一側面の活動ですが、航空・宇宙・防衛といった少量生産で組立作業等、人的要因が品質に及ぼす影響を考慮して追加された要求事項です。

3.9100:2000から復活した事項
  • これは、9100:2000であって、9100:2009からではありません。それは、8.2.4“管理の方式と程度”についての要求事項です。
    “顧客又は組織が、材料を重大な運用リスク(例えば、クリティカルアイテム)として識別する場合、組織は、試験報告書の正確さの妥当性確認を行うためのプロセスを実施しなければならない。”とあります。
    9100:2000の7.4.3“購買製品の検証”で、“組織が購買した製品の検証に試験報告書を利用する場合、この報告書のデータが該当する仕様書に基づき、受け入れ可能であること。組織は定期的に材料試験報告書の妥当性を確認すること。”規定されていました。しかしながら、この要求事項の本質を理解していない審査員、コンサルタントの過剰ともいえることを、実行するように組織に要求した経緯があり、9100:2009で削除されました。

4.その他 9100:2009をベースとし、一部追加した要求事項等
  • 運用リスクマネジメント
    プロジェクトマネジメント、作業移管の管理、及び予防処置を含めて、運用リスクマネジメントとして要求している。
    (リスクベースの考え方の採用)
  • 設計・開発
    9100:2009ベース
  • 外部提供者から提供されるプロセス、製品及びサービスの管理
    外部提供者から提供される“プロセス、製品及びサービスの管理”について、組織が行う事項と同等の要求をしている。当然といえば、当然である。
  • 製造及びサービス提供
    9100:2009ベース
  • 以下省略
文責 門間

JIS Q 9100:2016発行について・・・最近の状況

 IAQG(International Aerospace Quality Group)主催のミーティングが、4月23日シンガポールにて開催されました。主となる議題は、AS/EN/JIS Q 9100:2016の発行にかかわる事項と思われます。

IAQGが作成した9100:2016改正版は、承認されました。しかし、AS/EN/JIS Q 9100:2016の発行となると話は別次元、つまりWTO(The World Trade Organization)の公共工事の入札・契約に関してAS9100が早く発行し、欧州、日本のEN/JIS Q 9100:2016が遅れて、発行する状況となると、欧州、日本が不利益を被るとの論調のようです。(門間の推定です)

このような状況ですので、AS9100RevDの発行は、準備完了しているのですが、発行待ちのようです。
JIS Q 9100:2016版の発行準備が完了して、AS/EN/JIS Q 9100:2016同時発行するためです。

JIS Q 9100:2016の準備と発行への作業は次のようにが進められているとのことです。
WTO公告(6/20〜8/20)
10月(9/20又は10/20)に発行


注記:WTOに関連する諸法
   入札契約適正化法、政府調達に関する協定、品質確保法、官公需法、
   入札談合等防止法、会計法、会計法規程等があります。 

文責 門間

ISO 9001:2015改正の要点: (8)サービス分野への配慮

 ISO 9001:2008においては、サービスは、“product(製品)”の一部“products and services(製品及びサービス)”として定義されてきました。
今回の改正では、“製品”と“サービス”を分けて定義しました。それはサービス提供を主とする組織への適用を容易にすることを狙いとし、用語の見直しが行われたとのことです。

“製品” を “製品及びサービス”に改正したことだけではなく、“作業環境”を“プロセスの運用に関する環境”に、
“監視機器及び測定機器”を“監視及び測定のための資源(resource)”に変更するなどのサービス関連の用語の見直しが行われました。(参照:JIS Q 9100:2015 QMS−要求事項 解 説)

 分離の趣旨は、製品とサービスとの間の違いを強調するためのようです。サービスの特性とは、少なくともアウトプットの一部が、顧客とのインタフェースで実現されることで、要求事項への適合がサービスの提供前に確認できるとは限らないからです。

 JIS Q 9100:2015での“サービス”の定義は、3.7.7「組織と顧客の間で必ず実行される、少なくとも一つ活動を伴う組織のアウトプット」とされています。定義の注記1〜4で、
 @サービスの主要な要素は、一般にそれが無形であることであると解説しています。
 A銀行、会計事務所、公的機関(例 学校、病院)など。

 サービス提供の例として、下記のものが例示されています。
 B顧客支給の有形の製品(修理される車)に対して行う活動
 C顧客支給の無形の製品(納税申告に必要な収支情報)に対して行う活動
 D無形の製品の提供(知識伝達という意味での情報提供)
 E顧客のための雰囲気作り(ホテル内、レストラン内)

 航空・宇宙・防衛産業で考えてみましょう。
航空機、護衛艦、戦車等に対して組織が整備・修理・オーバーホール等の作業などは、B顧客支給の有形の製品(修理されるもの)に対して行う活動に該当します。
これらの活動に対しては、IAQGが作成した9110規格を基に発行したAS/EN9110規格を使用することを推奨しております。
また、製品を調達し、小口販売する組織を含め、部品、材料及び組立品を調達し、これらの製品を航空、宇宙及び防衛産業の顧客に販売する組織、具体的には、商社、ディストリビューターの活動に対しては、IAQGが作成した9120規格を基に発行したAS/EN9120規格を使用することを推奨しております。

 したがって、製造している組織において、ISO 9001:2015規格を理解するときに、“製品及びサービス・・・云々”との要求事項が出てきた場合、“サービス”という語句を無視して考えればよいのです。
 ただし、顧客への製品引き渡しにおいては、提供者と顧客の間で行われる処理・行為は、サービスの要素が伴うことも事実です。  なお、ソフトウェアは、(例 コンピュータープログラム)製品であることは、自明ですね

 JIS Q 9001:2015「付属書A及び解説」、JIS Q 9000:2015 「3.7.6製品 及び 3.7.7サービス」及びJISQ9100:2009「1.2適用」を参照にして記載しました。

文責 門間

ISO 9001:2015改正の要点: (7)規範的な要求事項の削減

“規範的な要求事項”と言われても、その“規範”の意味を理解して解説する必要があります。
三省堂 大辞林によれば、“@行動や判断の基準・手本、A単なる事実ではなく、判断・評価などの基準として則るべきもの。基準。規格。”とあります。

フリー百科事典『ウィキペディア』によれば、規範とは、
「〜である」と事実命題に対し、「〜べきである」と記述される命題ないしその体系をいう。法規制や社会規範がその典型であり、道徳や倫理も規範の一種である。社会学において人間社会集団におけるルール・慣習の一つでもある。
と記述されています。


 それでは、ISO9001:2008版で要求されていた規範的な箇条で、ISO9001:2015版改正で要求事項として含まれなくなった箇条は、次のような事項です。

 ・4.2.2 品質マニュアルの制定
 ・5.5.2 管理責任者の任命
 ・7.5.2 製造及びサービスに関するプロセスの妥当性確認(*1)
       a)プロセスのレビュー及び承認のための明確な基準・・・削除
       b)設備の承認及び要員の適格性確認・・・・・・・・・・・・削除
       c)所定の方法及び手順の適用・・・・・・・・・・・・・・・・・・削除
       d)記録に関する要求事項・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・削除
       e)妥当性の再確認・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・残る
       (*1)2015版改正では、8.5.1製造及びサービス提供の管理 f) では、一部として残る。
 ・7.5.5 製品の保存・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・一部注記に移行
 ・8.1(測定、分析及び改善)一般・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・一部注記に移行

などです。


 組織の主体性を尊重するために、“削除”したということです。
しかし、要求事項として削除したからと言って、品質マニュアルの制定、管理責任者の任命をする必要はないといっていわけではありません。

航空・宇宙・防衛分野のJISQ9100:2016改正(案)では、品質マニュアルの制定、管理責任者の任命については、要求事項とされています。
また、“7.5.2 製造及びサービスに関するプロセスの妥当性確認(特殊工程の管理)”の詳細な要求事項は、“8.5.1.2特殊工程の妥当性確認及び管理”として盛り込まれる予定です。

文責 門間

ISO 9001:2015改正の要点: (6)明示的な文書化要求の削減

 ISO9001:2015規格の付属書AのA.6「文書化した情報」について、全ての文書要求事項に“文書化した情報”が使用されています。下記は、A.6「文書化した情報」の概要です。

 JIS Q 9001:2008では、“文書”、“文書化された手順”、“品質マニュアル”、“品質計画書”、などの特定の用語を用いていましたが、この規格では、“文書化した情報を維持する”という要求事項と規定しています。

 JIS Q 9001:2008では、要求事項への適合の証拠の提示に必要な文書を意味するために“記録”(4.2.4参照)という用語を用いてきましたが、今回の改正では“文書化した情報を保管する”という要求事項として表しております。

 求められる管理の内容を区別する意味で“維持”及び“保管”という要求事項にして、特定の文書、記録を明示しておりません。表面的には要求事項が緩和されているようですが、自由度ができた分、組織には、必要となる文書化した情報及び責任・権限を自ら明確にし、自立的にQMSを計画・運用することが求められます。ここまでがA.6「文書化した情報」の概要です。

 規格で、また“文書化した情報”だけで、“維持”及び“保管”という要求事項がない場合でも、現実的には、文書にしなければ活動が徹底しないし、記録を保持しなければ、顧客、認証機関に説明できないし、納得してもらえないというジレンマがあります。

文責 門間

ISO 9001:2015改正の要点: (5)組織の意図した結果、顧客満足の向上、パフォーマンスの強調

 外部・内部環境を理解し、外部・内部の課題を明確にし、経営方針と関連してQMSの計画を立案・実行して、組織の意図した結果を達成することが求められています。
それに加えて、顧客満足の向上を目指すことも求められています。

 特に、2015年版の改正において“顧客満足”の定義が、“顧客の期待が満たされている程度に関する顧客の受けとめ方”とあり、ISO 9000:2005の定義である“顧客の要求事項が満たされている程度に関する顧客の受けとめ方”とは、異なっています。“期待が満たされている程度”と期待値が高まっていいます。

 パフォーマンスについては、規格の随所に記載されています(4.1,4.4.1c、5.3c・・・・9.3.2c, 10c等)。
パフォーマンスの定義は、“測定可能な結果”であり、定量的な結果と定性的な結果があります。
このようにパフォーマンスが多いと、QMSの運用、内部監査、マネジメントレビュー等において、“結果”が優先され、プロセスの適合性が疎かにされる懸念があります。その点は、心して対応しないとプロセスアプローチの規格の意図が台無しにされてしまいます。

文責 門間

ISO 9001:2015改正の要点: (4)リーダーシップの強化

“トップマネジメントが、QMSに関するリーダーシップを発揮し、コミットメントを実証しなければならないこと”については、ISO9001:2008年版と基本的には同じです。 しかし、細部について“事業プロセスへの品質マネジメントシステムとの統合”を求めています。
それは、次の規格箇条5.5.1一般の要求事項により読み取れます。

c) 組織の事業プロセスへのQMS要求事項の統合を確実にする。
b) QMSに関する品質方針及び品質目標を確立し、
   それらの組織の状況及び戦略的な方向付けと両立することを確実にする。
d) プロセスアプローチ及びリスクに基づく考え方の利用を促進する。
g) QMSがその意図した結果を達成することを確実にする。
 (上記記載では、b)、c)を意図して逆転して掲載)


また、序文0.3.2 PDCAサイクルの中の“図2−PDCAサイクルを使った、この規格の構造の説明”において、リーダーシップを中心に据えて、計画、支援、運用、パフォーマンス評価、改善の活動を指揮していくことが明確にされています。
このことは、QMSが、事業プロセス(経営計画と運用)と乖離せずに運用されていることを求めていることにほかなりません。

文責 門間

ISO 9001:2015改正の要点: (3)プロセスアプローチの適用向上、PDCAサイクルとリスクに基づく考え方

 プロセスアプローチの適用は、既にISO 9001:2000版から採用されてきました。
プロセスとは、“インプットをアウトプットに変換する、相互に関連する又は相互に作用する一連の活動”と定義されてきました。

 例えば、顧客要求事項は設計・開発プロセスの一つのインプットであり、設計・開発プロセスの活動の結果として、図面、購買仕様書等がアウトプットとなり、購買プロセス、製造プロセスへのインプットとなっています。

 組織は、顧客要求事項を満たし、顧客満足を向上させるために、品質マネジメントシステムを構築し、実施し、継続的改善を実施するのに必要なプロセスを明確にして、さらにそれらの相互関係を把握して、運営管理することをプロセスアプローチと呼んできました。そして規格では、組織に対して、QMS構築に際し、プロセスアプローチの採用を推奨してきました(復習です)。

 ISO 9001:2015では、プロセスアプローチの“適用向上”としました。インプットを「顧客要求事項」だけでなく、「組織及びその状況の理解」及び「密接に関連する利害関係者のニーズ及び期待」として、トップマネジメントのリーダーシップ(箇条5章)を中心として、
計画(Plan箇条6章)、支援・運用(Do箇条7章及び8章)、パフォーマンス評価(Check箇条9章)、改善(ACT箇条10章)のPDCAサイクルをまわすことにより、QMSのアウトプットとして製品とサービスの顧客満足を獲得するというものです。(規格 “図2−PDCAサイクルを使った、この規格の構造の説明”があります。)

 最後は、「リスクに基づく考え方」です。

これについては「リスクベースの考え方」のコラム第1回〜第4回を参照ください。>>>
文責 門間

ISO 9001:2015改正の要点: (2)組織の状況の理解とQMSの適用範囲の決定

 2015年版では、組織の“QMSの適用範囲の決定は、組織の状況を理解した上で決めること”が要求事項となりました。ではQMSの適用範囲はどのようにして決定すればよいのでしょう。

規格箇条4.3では、適用範囲を決定するには、
a) 4.1に規定する外部及び内部の課題、
b) 4.2に規定する、密接に関連する利害関係者の要求事項、
c) 組織の製品の三点を考慮することを求めています。

 まずは、組織の状況とは、“QMSの意図した結果を達成する組織の能力に影響を与える、外部及び内部の課題を明確にする”ことです。
それでは航空機産業で見ると外部の課題とはどのようなことがあるのでしょうか。マイナスの課題だけではなくプラスの課題もあります。

規格の注記1に、
“課題には、検討の対象となる、好ましい要因又は状態、及び好ましくない要因又は状態が含まれる”とあります。

 航空機産業で考えると、

外部の要因の例としては
@グローバルな成長産業、
A中部地域にとって国策としてアジアNo.1航空宇宙産業クラスター特区に指定、
Bコスト競争の激化があります。

そして、外部の要因に対する外部の課題としては、
@一貫生産体制の確立、
Aサプライチェーンの整備、
BITとセキュリティ確保が挙げられます。


 一方、内部の要因としては、
@プロジェクトの増加、
A工場敷地、設備の不足、
B従事者の老齢化、不足があり、

対応としての内部の課題は、
@工場・設備の増強、
A従事者の確保と教育・訓練、
BITとセキュリティの確保等があります。


 次は、“密接に関連する利害関係者の要求事項”を把握することです。
民間航空機産業では、利害関係者としては、エアライン、顧客であるプライムメーカー、株主、債権者、供給者(材料、部品メーカー)、行政機関、地域社会、従事者等がありますが、密接に関連する利害関係者といえば、プライムメーカー、供給者、行政機関、従事者が主な関係者です。

顧客であるプライムメーカーからの要求としては、
@品質・価格・納期のQCD、
AJIS Q 9100,Nadcap認証取得、
Bコンプライアンス、
C機密保持等です。

供給者からの要求は、
D製造性、検査性の改善、
E価格アップ、納期余裕、

従事者からは
Dの製造性、検査性の改善、

行政機関からは、
F順法(安全性を含む)等の要求です。



 では、これらの外部、内部からの課題、利害関係者からの要求事項及び製品(航空機)という観点から“QMSの適用範囲の決定”はどのように決めたらよいのでしょうか。

製品を航空機部品機械加工とした場合、
外部の課題@~B、内部の課題@~B、及び利害関係者からの要求@~Fと、規格の各箇条が適用可能か否かをマトリクス的に検討すればよいのです。

結論は、箇条“8.3製品及びサービスの設計・開発”以外は、適用可能であると判定できます。
文責 門間

ISO 9001:2015改正の要点: (1)附属書SLの適用規格の構造

ISOマネジメントシステム規格の一つであるISO 9001:2015が昨年9月に改正されました。
その要点は、次の9項目です。

(1) 附属書SLの適用規格の構造
(2) 組織の状況の理解とQMSの適用範囲の決定
(3) プロセスアプローチの適用向上、PDCAサイクルとリスクに基づく考え方
(4) リーダーシップの強化
(5) 組織の意図した結果、顧客満足の向上、パフォーマンスの強調
(6) 明示的な文書化要求の削減
(7) 規範的な要求事項の削減
(8) サービス業への配慮
(9) QMS固有の要求事項の強化、追加、拡大


 今回は、(1)附属書SLの適用規格の構造について確認してみます。
まず、「附属書SL」とは“なにか”から入りましょう。実は、私も知りませんでしたが、インターネットで調べてみますと次のようなことです。

ISO規格を制定する際に従うルールの一つである“ISO/IEC Directives(専門業務用指針)補足指針”ことです。この附属書SLが、2012年5月に改正され、今後制定・改正されるすべてのISOマネジメントシステム規格については、その構造、分野共通の要求事項及び用語・定義を共通化することが定められたのです。

 ISOマネジメントシステム規格には、ISO 9001(品質)、ISO 14001(環境)、ISO 45001(労働安全衛生)など多数の規格があります。しかし、分野は異なるもののマネジメントシステム規格として共通する要求事項は多くあるわけです。例えば、方針・目標、マネジメントレビュー、文書・記録管理、内部監査などです。これらの要求事項をそれぞれの分野ごとに比較すると、同じISO規格にも関わらず要求内容は統一されていなかったのです。また、規格そのものの構造も分野ごとに異なっているのです。

 “附属書SL”は異なる分野のISOマネジメントシステムの整合化を図る目的で作成された、ISOマネジメントシステムを作成する際のフレームワークなのです。
具体的には、附属書SLの箇条タイトルは、次のように統一されることになりました。

附属書SLの箇条タイトル
序文 7. 支援
序文 7. 支援
1. 適用範囲  7.1 資源
2. 引用規格  7.2 力量
3. 用語及び定義  7.3 認識
4. 組織の状況  7.4 コミュニケーション
 4.1 組織及びその状況の理解  7.5 文書化された情報
 4.2 利害関係者のニーズ及び期待の理解   7.5.1 一般
 4.3 XXXマネジメントシステムの適用範囲の決定   7.5.2 作成及び更新
 4.4 XXXマネジメントシステム   7.5.3 文書化された情報の管理
5. リーダーシップ 8. 運用
 5.1 リーダーシップ及びコミットメント  8.1 運用の計画及び管理
 5.2 方針 9. パフォーマンス評価
 5.3 組織の役割、責任及び権限  9.1 監視、測定、分析及び評価
6. 計画  9.2 内部監査
 6.1 リスク及び機会への取組  9.3 マネジメントレビュー
 6.2 XXX目的及びそれを達成するための計画策定 10. 改善
 10.1 不適合及び是正処置

注記:“XXX”には、品質、環境など、対象となる各マネジメントシステム分野の名称が記述される。
注記:箇条8“運用”には、マネジメントシステム分野の主となる固有要求事項が当てられる。
  (ISO9001:2015の場合は、ISO9001:2008の箇条7“製品実現”の要求事項の多くがここに当てられる)

文責 門間

 皆様、既にご存知だと思いますが、JIS Q 9100:2009(航空,宇宙及び防衛分野の組織に対する要求事項)が改正されます。
この改正は、ISO9001:2015(2015/9発行済み)にIAQGが航空,宇宙及び防衛分野特有の要求事項を追加し、9100:2016として2016年4月に発行予定です。
その後、9100:2016を基に、日本工業標準調査会の審議をへて、日本規格協会からJIS Q 9100:2016として2016年10月に発行される予定です。

 つきましては、皆様方の参考としてISO9001:2015の主な改正事項と9100:2016の主な改正予定事項を以下に示します。なお、本内容は平成28年2月にJAQGが開催した「平成27年度JAQG活動報告会」の資料に準拠しています。

ISO 9001:2015の改正事項

(1)附属書SLの適用規格の構造(構成)
 ISOマネジメントシステム規格(MSS)は共通フレームワーク(附属書SL)に基づき規定することになり、下表に示す通り、8箇条から10箇条の構造に変更されました。

JISQ9100_2016校正

(2)組織の状況の理解とQMSの適用範囲の決定 
   適用範囲は組織の課題と利害関係者のニーズを考慮して決める。

(3)プロセスアプローチの適用向上、PDCAサイクルとリスクに基づく考え方
   改訂ISO9001が採用する3つの重要概念:
   @ プロセスアプローチ、 A PDCAサイクル、 B リスクに基づく考え方

(4)リーダーシップの強化
   トップマネジメントの目に見えるかたちでの支援、関与、及びコミットメントが重要

(5)組織の意図した結果、顧客満足の向上、パフォーマンスの強調
   目的志向によりQMSを運用

(6)明示的な文書化要求の削減
   文書管理等の文書化された手順書の作成要求がなくなり、組織の主体性を尊重

(7)規範的な要求事項の削減
   管理責任者の任命、プロセスの妥当性確認等の要求がなくなり、組織の主体性を尊重

(8)サービス業への配慮
   「製品」が「製品及びサービス」へ変更

(9)QMS固有の要求事項の強化、追加、拡大
   組織の知識、ヒューマンエラーに関する要求事項の追加等

9100:2016主な改正予定事項

 IAQGが作成した9100規格投票ドラフトの主な改正予定事項を次に示します。

JISQ9100_2016校正