【連載コラム】 一貫生産について


連載コラム 第1回 一貫生産について

(2012年1月04日)

 航空機産業における「一貫生産」の連載解説の初回にあたり、今まで主流であった「工程別生産」の実態、「一貫生産」への移行の背景及び狙いを説明します。

 従来、国内大手航空機メーカーは部品(主に構造部品)の製造において、部品の製造工程・方法を自社内で検討・決定し(一般的には工程設計と呼ぶ)、決定された各製造工程を社内で担当する作業と社外に委託する作業に仕訳(Make/Buy仕訳と呼ぶ)する。その後、各製造工程を受け持つ、外注メーカーに素材、作業文書(作業工程表や作業指示書と呼ぶ)及び治工具を支給することになるが、素材は先ず、第1工程を担当する外注メーカーに行き、そこで第1工程の加工が完了すると、その加工済み品(仕掛製品)は航空機メーカーに戻る。航空機メーカーでの第1工程に対する検査が終了すると、次工程を担当する別の外注メーカーに渡り、そこで次工程加工を実施し、完了後にまた航空機メーカーに戻る。

 以下、加工品は、工程数に応じて航空機メーカーと単一工程を受け持つ外注メーカーとの間を何回も行き来する。単一工程を受け持つ外注メーカーは“委託された加工のみ”を担当するだけでよく、部品の製造工程・方法や条件を検討・決定するという間接業務は基本的には不要である。これが、関係者が「ノコギリ発注」や「おんぶに・だっこ発注」と揶揄する、従来行われてきた「工程別生産」の実態である。「工程別生産」と「一貫生産」の違いを下図で確認して欲しい。




 次に「工程別生産」から「一貫生産」への移行の背景と狙いを述べる。航空機生産の戦後再開以来、国内大手航空機メーカーは防衛需要を主体にして上記の「工程別生産」を活用してきた。製品の設計情報を基にして、作り方、必要な治具から製品材料まで全て親企業が準備し、委託先協力企業に与えて来た。このために大手航空機メーカーは親企業として、作り方を検討・設定する間接業務の体制を整備し、間接要員を抱えて来た。

 年々の防衛予算の削減に伴い民間需要の拡大の必要性が拡大してきた。この民間需要の拡大・取り込みのためには、国際競争力の確保の観点からコストダウンが必要不可欠となり、直接の加工費は勿論のこととして間接費も削減の対象とせざる状況になった。また、防衛需要も例外ではなく、従来のコストでの製造が許されなくなって来たことは言うまでもない。このコストダウンの手段として考え出されたのが、「一貫生産」である。親企業たる国内大手航空機メーカーの狙いは、コストダウンにある。

 実は、この現象は国内に限定されたことではない。国際的な航空機業界の巨人であるボーイングにおいても同様である。即ち、日本の大手航空機メーカーに対して、エアバスとの対抗上コストダウンがボーイングにとって必要不可欠である。そのため、日本企業が参画した767、777そして787と分担比率が増加していると同時に分担すべき間接業務も拡大する反面、コストに対する要求や保証は厳しくなって来ている。

 次回(第2回)には、委託先としての企業に求められる機能(品質マネジメントシステムで言うプロセス)の全容に関して述べたいと思う。

文責:小山 隆一


連載コラム 第2回 「一貫生産」において委託先企業に求められる機能

(2012年1月10日)

 今回は、委託先としての企業に求められる機能(品質マネジメントシステムで言うプロセス)の全容に関して述べたいと思う。

 先ず、忘れてはならない、必要不可欠な機能として求められることは“核になる加工技術(固有技術)”を持っていることである。ここで言う加工技術とは、従来委託元である国内大手航空機メーカーから「工程別生産」として受注していた加工作業そのものである。
 この加工作業は委託を受ける企業にとっては、利益を生み出す源であり、委託元から見て加工技術上、コスト上及び/あるいは納期上魅力のあるものでなくてはならない。この加工作業を核として、必要となる機能を引合いから納入の流れに従って、以下に順番に述べたい。読者諸兄には、図「一貫加工メーカーに求められる機能」を参照して欲しい。

 顧客からの引合いに対応した「契約・受注機能(プロセスと同義語として使用)」が先ず求められる。この機能は、顧客の要求事項を顧客の基本契約書や各種仕様書に基づき精査・確認し、見積し、契約・受注に至る機能である。

 次に来る機能は「工程設計機能」だ。この機能は、従来委託元が主に実施してきたが、「一貫生産」においては委託先企業のQCD上重要な機能となる。顧客要求事項に沿って、製品の加工工順・条件を設定する機能である。

 次の機能は「内外仕訳機能」である。この機能は、先の「工程設計機能」と同時進行するケースが多い。なぜならば、製品の加工方法の決定は社内及び社外加工先で具備している設備・装置・技術に依存しているからである。

 受注製品の加工工順・条件及び社内加工/社外加工の担当区分が決定したら、次の機能は「生産手配機能」である。この機能は、顧客からの納期に従って生産現場及び社外加工先(外注先)へ作業指示する機能である。

 生産指示を受けた社内の製造部門が、「製造機能」のある部分を受け持ち、社外加工先(外注先)が残りの「製造機能」を受け持つ。

 社外加工先への作業手配に必要な機能が「購買管理機能」である。従来「工程別生産」を担当して来た企業が「一貫生産」を担当する上で最も補強しなければならない機能のひとつと思われる。

 

 必要な機能が更に3つある。これら機能は「工程別生産」においては、委託元である、国内大手航空機メーカーがほぼ全面的に担って来た機能である。その1つが「完成検査機能」である。「一貫生産」を任された製品の品質を“一貫生産メーカー”は責任を負う必要がある。

 2つ目が「日程管理機能」である。顧客の要求事項の一つである、納期を厳守するには加工工順に従って、社内・社外の加工日程を進捗管理する必要がある。この管理には日々発生するトラブルに対する調整・処置も含まれる。

 あと残っている機能が「不適合品処理機能」である。航空機の製品製造において予防処置を徹底しても回避できないのが、顧客からのクレーム発生であり、社内・社外の加工工程途中における不適合品の発生である。これら発生に対しては、品質上適切に且つタイムリー対処しなければならない。そのための機能が「不適合品処理機能」である。

 以上、「一貫生産」に必要な機能(プロセス)を概括したが、見識ある読者諸兄は既にお気づきのとおり、これら機能は、品質マネジメントシステムにおける“製品実現プロセス”そのものである。

 次回(第3回)から、これら必要機能を個別に順を追って解説したい。

文責:小山 隆一

連載コラム 第3回 「一貫生産」における”契約・受注機能”

(2012年1月23日)

 第2回は、「一貫生産」を受注する委託先(受託)企業に求められる10の機能(品質マネジメントシステムにおける製品実現プロセス)の全容に関して紹介した。今回からこの10の機能について個別に解説する。今回は、「契約・受注機能」である。

 委託先(受託)企業の製品実現プロセスの最初の機能(プロセス)が「契約・受注機能」であり、顧客とのコミュニケーションを図る重要な機能である。この機能は大別して以下の2つの機能で構成される。

  • 顧客の基本要求事項の確認、折衝及び契約締結
  • 個別製品要求事項の解読、不明事項等の確認及び図面・スペックの変更要請・調整

1.顧客の基本要求事項の確認、折衝及び契約締結

 一般的に大手航空機メーカーが委託先との取引開始に当たって、「取引基本契約書」及びその付属書「品質マネジメントシステムに関する要求事項」を提示する。委託先の企業はこれら契約関連の文書を精読して、疑問事項や要望事項を抽出する。この抽出された疑問事項や要望事項を委託元であるメーカーに十分確認して折衝した上で、契約関連の文書に反映してもらう。この段階での注意事項としては、以下の事項が挙げられる。

  • 提示された契約関連の文書内容の精査には、営業部門のみではなく、経営層はもちろん、受注後に
    関連する製造部門や品質管理部門等の責任者も参加させる
  • 先をみた判断(戦略思考)を入れ、自社が“責任を持ってできること”と“できないこと”を仕訳して
    相手が親企業であろうとも遠慮無く、疑問事項や要望事項として文書で伝達する
  • 折衝した後、互いの合意事項は契約関連の文書に盛り込み・修正等で確実に反映する
  • 契約の相手が海外企業の場合には、契約文書の一字一句とも疎かにせずに精査する。
    相手は“契約社会の組織”であることを忘れてはならない

2.個別製品要求事項の解読、不明事項等の確認及び図面・スペックの変更要請・調整

 ここでは、受託する個別の製品(構成部品が単一の単品と構成部品が複数ある組立品がある)の要求事項の明確化及びレビューを実施する。通常、契約締結をもって取引口座を開設した後、個別製品の要求事項は、図面及びそこから呼び出されるスペックによって顧客から指示される。この機能の遂行上の注意事項は以下の事項が挙げられる。

  • 図面及びスペックの要件を自社の設備・技術によって満たすことができるか確認する。
    できない場合には、変更要求(Deviation Request)を提出し、調整する
  • 図面及びスペック規定作業を自社内で実施できず、社外加工(外注)する場合には、
    その社外加工先の企業に十分検討してもらい、実行可能性を確認する
  • 海外企業の場合には、経済産業省の輸出手続きや国土交通省航空局の検査等の要求事項の
    確認と監督官庁との調整が必要となる
  • JISQ9100規格要求事項(7.2.2条項)である“製品に関わる特別要求事項の明確化”及び“リスクの
    特定”も忘れてならない

 最後に「契約・受注機能」として必要不可欠な要素を挙げたい。それは変更管理及びコミュニケーションである。変更管理であるが、発生する変更は、顧客である委託元からの基本要求事項や個別製品要求事項の変更と受託企業である自社から委託元への個別製品要求事項の変更が考えられる。これら変更事項の確実な履行(製品への反映)のために確実な情報伝達が要求される。このためには、顧客とのコミュニケーション及び社内のコミュニケーションの仕組みの整備、即ち顧客調達部門と顧客との窓口部門(通常は営業部署)、及びその窓口部門と社内の関連部門(製造部署、購買部署、品質管理部署等)との確実な双方向の情報伝達の仕組みの確立が要求される。

 次回(第4回)では、「工程設計機能」に関して解説する。

文責:小山 隆一


連載コラム 第4回 「一貫生産」における”工程設計機能”

(2012年2月06日)

 前回から「一貫生産」を受注する委託先(受託)企業に求められる10の機能(品質マネジメントシステムにおける製品実現プロセス)の個々の機能の解説をスタートしたが、今回は2つ目の「工程設計機能」の解説をする。

 “ものづくり”を生業とする企業にとっては、「工程設計機能」は中核的な機能(コアコンピタンス)のひとつと言える。なぜならば、この機能によって品質、コスト(工数)及び納期(加工期間)のほとんどが決定されるからである。通常この機能の業務は、前回解説した「契約・受注機能」が顧客からの引合いを受けた段階から始まる。
 引合いの段階での個別製品要求事項の解読の主役は、この「工程設計機能」が担う。受注する前から可能な限り、引合い製品(単品または組立品)の加工工程、使用機械・設備、加工条件等を具体的に検討することが肝要である。受注後の個別製品要求事項の内容確認は“再確認”の程度で考えて、所謂フロントローディング*として臨むべきである。また、受注前の引合いの段階でリスクを明確にして対処することで、受注後の経営的な成功の確率が高くなる。

 航空宇宙産業界においては、一般的この機能は“生産技術部門”が担っている。引合い時及び受注後の上記の具体的な検討、加工工数等の見積もりは「工程設計機能」の責務であるが、この機能(生産技術部門)だけで完結できる訳ではない。例えば、自社内で全加工工程をカバーできない場合には、この機能が主体的に社外加工先(外注)と加工条件や適用する治工具に関して十分意思疎通を図っておく必要がある。また、加工工程内での検査(工程内検査)や最終検査(完成検査)のやり方に関しては「検査機能」と十分調整して置く必要がある。材料の購買が「一貫生産」の契約の範囲に含まれている場合には、「購買管理機能」とのコミュニケーションも欠かせない。

 製品の加工に必要な“固有技術”の観点でみる。引合いした/受注した製品が単品か、組立品か、薄板の板金成形品か、ブロック材からの機械削り出し品か、また複合材成形品かで具備すべき“固有技術”は違ってくる。“固有技術”で絶対忘れてならないのは、特殊工程(Special Process)作業である。特殊工程には一般的には、化学処理、熱処理、溶接、ショットピーニング、コーティング、複合材、非破壊検査、材料試験等がある。特殊工程の細かな範疇は、委託元の企業によって違いがある。従って、委託先(受託)企業は、委託元の図面及びそこから呼び出されるスペックを精査する必要がある。 航空宇宙産業においては、一般的には右の図に示す様に航空機取りまとめメーカー(ないしは、エンジン取りまとめメーカーや搭載機器取りまとめメーカー)、所謂プライムメーカーの要求事項をサプライチェーンの全てメーカー、1次下請け(Tier1)、2次下請け(Tier2)、3次下請け(Tier3)・・・・・に展開し、適用する必要がある。特殊工程の要求に関しては、この要求事項のサプライチェーン展開が特に厳格に実施されることが多い。

 「工程設計機能(生産技術部門)」の最終的なアウトプットは、「生産手配機能(生産管理部門)」を経由して「製造機能(製造部門)」及び「購買管理機能(調達部門)」にインプットされる作業指示書や作業手順書である。

 次回(第5回)では、「生産手配機能」に関して解説する。

注記:*フロントローディングとは、業務の初期工程(フロント)に負荷をかけ(ローディング)、作業を
    前倒しで進めることで、品質の造り込みやリスク検出等の早期化を狙った活動である。

文責:小山 隆一

連載コラム 第5回 「一貫生産」における”生産手配機能”

(2012年2月20日)

 「一貫生産」を受注する委託先(受託)企業に求められる9つ*の機能(品質マネジメントシステムにおける製品実現プロセス)の個々の機能の内、今回は3つ目の「生産手配機能」の解説をする。

 この機能は“生産管理”の範疇に入り、一般的には広範囲の解説が可能と思うが、ここでは航空機産業の特徴的な話題に絞り記述する。

 前回解説した「工程設計機能」のアウトプットである加工及び検査の技術的な指示に、顧客である委託元からの納入指示や製造指示の情報(通常、製品個数や納期)を加えて「製造機能」の社内製造部門、「検査機能」の検査部門及び「購買機能」を担う購買部門に作業指示する機能が「生産手配機能」である。後者の情報は、顧客からの製造個数及びそれらの納期を生情報のまま作業指示として作業指示書や作業手順書に記載すれば済むものではない。特に、航空機産業では、自動車産業に比べ生産機数(台数)が少量ではあるが、一方1機種当たりの部品点数は遥かに多い。航空機産業は、所謂“多種少量生産”の典型である。そこで、受注している全体の製品生産規模の中で個々の製品の納期キープを行うために社内及び社外の製造部門の消化能力を考慮した、きめ細かな“生産・日程計画”が要求される。そのため、「生産手配機能」においては、生産管理用のコンピューターシステムを抜きには語れない。整備すべき、この生産管理用のコンピューターシステムは、委託先企業の規模によりパソコンシステムからサーバー仕様の大規模システムまで様々なものが考えられる。

 生産管理用のコンピューターシステムからの日程指示に基づき、作業指示書や作業手順書が、社内製造部門及び購買部門へ発行・伝達される。この作業指示書や作業手順書を受領した、「製造機能」を担う社内製造部門及び社外加工先(購買部門経由)において製造が実施される。また、製造過程を「日程管理機能」が製造の進捗状況を監視・測定することになる。

 「生産手配機能」においては、“変更指示”の発生を前提にシステム構築することが重要である。変更は、日々発生する。変更には、「工程設計機能」からの製造工程等の技術情報の変更、顧客要求事項の変更に基づく“生産計画”からの製造個数・日程の変更、また「製造機能」を担う現場からの不適合品の発生に伴う日程変更など様々考えられる。この日々発生する“変更指示”に対して、如何に手間暇かけずに、迅速に、且つ正確に変更情報を伝達できるか、が“生産管理”の勝負の分かれ目になる。この“変更指示”のためにも生産管理用のコンピューターシステムは「生産手配機能」には必要不可欠な要素となっている。

        

 JISQ9100規格要求の2009年版改訂として、顧客満足の条項において“納期どおりの引渡し”に関する監視・測定及び問題がある場合の是正処置の要求が追加になった。沢山の部品で構成される航空機産業においては、個々の部品の所定納期が遵守されなければ、その部品で構成される後工程の組立作業に直接悪影響を与えてしまう。規格要求事項である“納期どおりの引渡し”を順守するためには、この「生産手配機能」及び後日解説予定の「日程管理機能」が「一貫生産」担当企業においては、今後益々重要な要素となる。

 尚、ISO9001規格要求の中では、“納期どおりの引渡し”及び“生産管理”に関しては要求事項としての直接的な記述はない。

 次回(第6回)では、「内外仕訳機能」について解説する。

 注記:*前回まで10機能といってきましたが、解説する機能は全部で9つでした。
     著者の勘違いでした。お詫びして訂正します。

文責:小山 隆一

連載コラム 第6回 「一貫生産」における”内外仕訳機能”

(2012年3月05日)

 「一貫生産」を受注する委託先(受託)企業に求められる9つの機能(品質マネジメントシステムにおける製品実現プロセス)の個々の機能の内、今回は4つ目の「内外仕訳機能」の解説をする。

 「一貫生産」を文字どおりの意味で捉えると、第1回の図で示した様に委託先企業は“委託された全工程の作業”を社内で実施することを意味するが、現実的ではない。現実的には、社内では自社の強みである、従来からの加工工程に専念し、残りは社外に委託(外注加工)することになる。この様に委託を受けた製品の全工程を分解し、社内加工(Make)と社外加工(Buy)に仕訳する機能が「内外仕訳(Make/Buy)機能」である。

 この機能は、戦略的な観点から計画して運用する必要がある。従来社内加工としていた加工工程は勿論のこと、生き残りのため自社の将来のあるべき姿を考えた上で、社内加工として新たな加工工程を加えることも「一貫生産」を担う委託先企業の成功への鍵となる。
 元々、「工程別生産」の委託先企業が「一貫生産」の委託先企業(取りまとめ企業)への変身を考えること自体が戦略的ではあるが、実質的に社内で行える加工工程を追加する、社内外仕訳の基本を設定することはトップ自らが最終決断すべき事項である。

 航空機産業においては、委託元である顧客にから「一貫生産」を引き受ける際、契約時にある工程を社内加工として受注した場合には、事前の了解無しで、途中でその工程を社外加工にはできないという制約が付けられることや引合い時の提案書に“内外仕訳計画(Make/Buy Plan)”の提出が求められるのが一般的である。

 「内外仕訳機能」は「契約・受注機能」、「工程設計機能」及び「購買機能」と密接な関連を保って計画・運用する必要がある。顧客からの引合いの段階では、見積もり作成や提案書まとめ、また受注後においても顧客要求事項の最終確認としての「契約・受注機能」との、個別製品の工程設計の検討・設定としての「工程設計機能」との、更には、社外加工先の決定及び発注業務としての「購買機能」との連動が求められる。

 また「内外仕訳機能」は、以上述べた様に一つの製品(部品)内で加工工程別に社内外仕訳する場合と製品(部品)単位に社内外仕訳する場合が考えられる。一般的に後者のケースは、委託先が「一貫生産」企業として本来社内加工すべき加工工程まで社外加工することになり、「一貫生産」の趣旨に反する。しかしながら、何らかの理由によって社内加工工程の負荷がオーバーする場合には、緊急避難処置として許される。


 次回(7回)においては、「購買機能」に関して解説する。

文責:小山 隆一

連載コラム 第7回 「一貫生産」における”購買機能”

(2012年3月19日)

 「一貫生産」を受注する委託先(受託)企業に求められる9つの機能(品質マネジメントシステムにおける製品実現プロセス)の内、今回は5つ目の「購買機能」の解説をする。

 「一貫生産」を受注する企業とは言え、受注製品を製造するのに必要な全工程を自社で賄うことは現実的ではない。受注製品の適合性の全責任を負うためには、ほぼ全ての委託先企業にとっては、この「購買機能」は欠かせない機能と言える。この機能は大別して以下の3つの機能で構成される。

  • 供給先の選定及び承認、基本事項の契約及び評価(含む、再評価)
  • 外注加工品、購買製品の手配(供給先の運用管理)
  • 購買製品の検証受入れ

1.供給先の選定及び承認、基本事項の契約及び評価
 顧客から受注した製品の加工工程を外部に依存することになるので、最も重要なことは経営的に安定性があり、品質に信頼性があり、必要な製造能力を具備した供給先を選定・承認し、パートナーとすることである。そのためには、先ず“供給先の選定基準”を明確にした上で、それに基づき、JISQ9100やNadcapの認証取得有無の確認、現地事前調査・監査の実施、場合によっては類似製品の試作の実施等の結果をもって評価し選定する。 「一貫生産」を受注する委託先企業が、供給先として求めるケースは特殊加工が多いと思う。その供給先が顧客である大手航空機メーカーの該当する特殊工程の承認を得ている場合には問題ないが、認証が無い場合には注意を要する。顧客の承認を取得するには、かなりの期間及び費用を必要とするからである。

また、供給先の選定及び使用におけるリスク管理も忘れてはならない。昨年の東日本大震災の例でも、サプライチェーン管理の大事さが痛感される。このリスク管理では、個々の外注加工品や購買製品の“注文書”の発行前には、特定されたリスクを解消しておくことが望ましい。

 次の段階は、選定された供給先との契約行為への展開である。一般的には、「一貫生産」を受注する委託先企業と選定された供給先との間で、委託先企業から発行される“取引契約書”及びその付属文書として“品質管理仕様書”等に基づき、取引契約を締結する。ここで、重要なことは、顧客(委託元)要求事項のフローダウンである。航空宇宙産業においては、委託先企業の顧客である大手航空機メーカーの要求事項を基にして、例えば、工程・製造設備の変更時の事前承認、不適合品の連絡・処置の承認や品質記録に関する要求事項等を“品質管理仕様書”に盛り込み、サプライチェーンの総ての供給先に漏れなく、正確に伝達することが必要となる。これが、顧客要求事項(あるいは品質要求事項)のフローダウンである。

 供給先の評価には、上記の初回評価に併せ定期的な再評価が欠かせない。再評価は、供給先が、ある一定期間内で供給先が実行した外注加工品や購買製品の品質及び納期に関する実績データをベースにして実施されるのがよい。


2.外注加工品、購買製品の手配(供給先の運用管理)
 この2つ目の構成機能は、個々の外注加工品や購買製品に対する“注文書”の発行が主な業務となる。ここでの大切なポイントは、各外注加工品や各購買製品に関する個別の要求事項を漏れなく、正確に伝達することである。特に欠かすことができないのが、図面、仕様書、作業指示書や検査・検証指示書等の関連技術データの識別(図面番号、文書番号)及び適用すべき版(改定番号・符号)を明示することである。また、新規の供給先に対してや、既存の供給先での未経験加工に対しては、委託する加工が開始される前に、“製造計画書”や“作業手順書”等の提出を求め、承認を取ることを要求事項として記載した方がよい。
 更には、製造工程の検証(初回製品検査:FAI)を立会で実施する場合には、その旨“注文書”に明示することも肝要である。

 「契約・受注機能」(第3回)で述べたことではあるが、ここでも変更管理及びコミュニケーションが必要不可欠な要素である。現在は、顧客と「一貫加工」の委託先企業との間、また「一貫加工」の委託先企業と供給先との間で紙ベースのデータ・情報の伝達ではなく、ITを活用した“ペーパーレス”システムが普及してきており、上記1項の段階でデータ管理に問題が無いかを確認し、問題があれば事前に解決しておく必要がある。

 また、この機能の中には、“注文書”発行前の納期及び価格調整、及び発行後の供給先の作業状況の確認・フォロー及び支援が含まれるが、「日程管理機能」(第11回)の解説で触れたい。


3.購買製品の検証受入れ
 3つ目の構成機能は、上記2項の“注文書”での要求事項に適合した、外注加工品や購買製品が納入されたかを確認する機能である。航空宇宙産業では、原則この機能は品質保証(検査実施)部門によって実行される。この確認の方法、即ち検証の方法は、予め“品質管理仕様書”及び/又は“注文書”によって供給先に伝達しておく必要がある。
 検証の方法等に関しては、「検査機能」(第9回)で触れることにする。

 以上、解説した3つの構成機能は、JISQ9100規格7.4項の主な要求事項を中心に述べたものである。これら要求事項は、必要最小限な実施事項と捉え、「一貫生産」を受注する委託先企業が自ら内部及び外部環境を考慮して、独自の“拡大した計画”を立て、実行すべきである。その際に参考になるのが、JAQGのSCMH(Supply Chain Management Handbook )である。

 次回(8回)においては、「製造機能」に関して解説する。

文責:小山 隆一

連載コラム 第8回 「一貫生産」における”製造機能”

(2012年4月02日)

 「一貫生産」を受注する委託先(受託)企業に求められる9つの機能(品質マネジメントシステムにおける製品実現プロセス)の内、今回は6つ目の「製造機能」の解説をする。
 なお、ここでは、板金加工や機械加工など個々の固有技術に関する解説を行うものではない。

 “ものづくり”を生業とする企業にとっては、第4回で解説した「工程設計機能」及び次回9回で解説予定の「検査(品質管理)機能」と合わせてこの「製造機能」は最も重要で必要不可欠な機能と言える。顧客である「一貫生産」の委託元が或る委託先(受託)企業に発注する理由は、正にこれらの機能、中でもこの「製造機能」がしっかりしていることを認めるからに他ならない。それ故、「一貫生産」を目指す企業としては、第一に自社としてのこの「製造機能」は何かを認識、または再確認して臨む必要がある。いわゆる“ものづくり”企業としての“強み(コアコンピタンス)”の認識及び確立が重要である。この点が曖昧なままで「一貫生産」の作業を受注できたとしてもその企業は、経営として継続的な成功にはつながらないであろう。

 “強み”としては、“低コスト力”も絶対条件である。本稿の第1回で記述した様にもともと顧客である「一貫生産」の委託元が委託先企業を求める理由は、グローバル競争を勝ち抜くために製品としての航空機を安く提供するためにコストダウンが欠かせないからである。

 

 「製造機能」に求められることで運用上大事になるのが、JISQ9100規格要求事項の“管理された状態での製造”と“製造が計画のとおり実施された証拠の保持”である。 “管理された状態での製造”とは、「工程設計機能」によって計画・設定された製造工順及び製造条件に基づいて製造作業を実施することである。更には「工程設計機能」内の「検査計画機能」(本稿では、独立した機能として解説の対象にはしなかった。)によって計画・設定された検査工順及び検査条件に基づいて検査作業を実施することである。

 「工程設計機能」において計画・設定された工順や条件は、「製造機能」や「検査機能」から見ていつも完璧な内容(指示)とは言えない。この際、注意を要するのは、完璧でないと言って、「製造機能」を持つ製造現場で勝手に修正してはいけない。その無視は論外である。原則的に、製造及び検査の計画・設定された工程・手順・条件が記載された“工程指示書”の修正は、その該当する作業開始前にその発行元である「工程設計機能」を持つ部門の予め承認された者が行う必要がある。

 “製造が計画のとおり実施された証拠の保持”に関しては、多言は要しないであろう。各作業および検査が「工程機能」が設定・指示した通りに実施した証拠として、作業担当者及び検査委担当者のサイン(又は捺印)と日付が記載された“工程指示書”を記録として保管することである。

          

 以上、どの固有技術にも共通する事項を中心に解説したが、「一貫生産」を受注する委託先企業として最も大事なことの一つは「工程設計機能(含む検査計画機能)」、「製造機能」及び「検査機能」が適正な規律の基で連動して機能出来ることではなかろうか。
 最後に「製造機能」は、品質上も納期上も一番知力と馬力が要求される機能と言える。

次回(9回)においては、「検査機能」に関して解説する。

文責:小山 隆一

連載コラム 第9回 「一貫生産」における”検査機能”

(2012年4月17日)

 「一貫生産」を受注する委託先(受託)企業に求められる9つの機能(品質マネジメントシステムにおける製品実現プロセス)の内、今回は7つ目の「検査機能」の解説をする。

 「検査機能」は、社内で実施された加工作業に対するものと社外の外注工場において実施された加工作業(社外から調達した材料等も含む)に対するものとがある。社内作業に対する「検査機能」は、一般的に製品・部品の製造工程の途中での“工程内検査”及び最終工程作業終了後の“完成検査(最終検査)”に分けられる。また、加工作業や購買された製品・材料に対するそれは、“受入検査”となる。

 ここで、外注工場や購買先(商社も含む)から来る製品・部品(以下、購買品と呼ぶ)を“受入検査”で、どの程度まで検査するか、が「一貫生産」を受注する委託先(受託)の大きな課題となる。外注工場の検査結果を購買品の受入時に、社内としての実質的な検査行為を行わず、“納入時に添付される検査記録等で確認する”ことも購買品の受入検証の一つの方法である。しかし、「一貫生産」の立上げ初期では、顧客である委託元の早期な信用の確保が必要であること、及び何より不適合が発生した場合に、どの外注先の、どの工程でその不適合を発生させたか、責任を明確にする必要がある。よって、本稿では、外注先が検査を実施し、その後社内の“受入検査”でも実質的な検査行為を行うことを強く推奨したい(下図を参照されたい)。

  

 次に、この「検査機能」を社内のどの部門が担うかの課題もある。特に、航空宇宙産業においては、欧米文化が背景にあり、いわゆる“性悪説”の思想が管理の根底に流れている。すなわち、立法に当たる「設計機能」、行政に当たる「製造機能」及び司法に当たる「検査(品質管理)機能」、各機能の三権分立、独立性の確保である。従来の「工程別生産」を受注する委託先(受託)企業、特に小規模企業においては、一人の責任者が「製造機能」及び「検査機能」の双方を管理運営することは許されないことはないが、「一貫生産」を受注する委託先(受託)企業においては、「製造機能」及び「検査機能」をそれぞれ異なる管理者を置いて管理運営することが望ましい。もちろん、「一貫生産」において、「設計機能」を含めて受注する場合には、「設計機能」を担う部門の責任者は「製造機能」及び「検査機能」の責任者以外の者が担う必要がある。

 最後に、無駄の無い適切な「検査機能」を働かすには、どう考えたらよいであろうか? 答えは、前工程の「工程設計機能(含む検査計画機能)」にある。この「工程設計機能(含む検査計画機能)」を担う、生産技術部門及び/または検査計画部門と十分な意思疎通を図って、製造工程内のどの段階で、どんな検査を実施するか、を計画することが欠かせない。これが、JISQ9100規格要求の“管理された状態での製造・検査の実施”及び“製造・検査が計画のとおり実施された証拠保持”の確実な実行につながる。

なお、「検査機能」の実行を担う検査担当者“検査員”の力量評価及びその実行結果の証として使用する合格印及び/またはサインの綿密な管理も、適切な「検査機能」の実行には欠かせない。本稿では、その重要性のみを記して解説は他稿に譲る。

 次回(10回)においては、「不適合品処理機能」に関して解説する。

文責:小山 隆一

連載コラム 第10回 「一貫生産」における”不適合品処理機能”

(2012年5月07日)

 「一貫生産」を受注する委託先(受託)企業に求められる9つの機能(品質マネジメントシステムにおける製品実現プロセス)の内、今回は8つ目の「不適合品処理機能」の解説をする。

 この世の中、いかなる業種、業態にかかわらず避けて通れないのが、顧客への不適合品の流出(顧客からのクレーム)及び社内の工程内検査(含む受入検査)における不適合品の発生である。航空宇宙業界においては、航空機や宇宙機器の高い信頼性や安全性の確保の面から他の業界以上に、これらクレーム及び社内の工程内不適合品への対応のための確かな仕組みの構築、責任と権限の明確化及びその厳格な運用が求められる。
 この機能は、本業界では「検査機能」(前回解説した)を所轄する部門が担うことが一般的である。

 先ず「不適合品処理機能」における、“顧客クレームへの処理”の要点に関して述べる。顧客からクレーム情報を受けた場合には、迅速なクレーム内容の確認が最初に必要となる。その後直ちに、このクレームによって影響を受ける製品・部品に関する情報、例えば、製品・部品番号、数量、出荷日付を含む不適合の明確な通知が必要となる。通知を要する関係者には、ケースバイケースではあるが、顧客をはじめ、監督官庁、自社内関連部門や当該供給先(外注先)が含まれる。また、クレームが発生した場合には、同じ可能性のある製品・部品の生産、運用中の製品・部品への影響を防ぐために、封じ込め処置として仕掛製品・部品の生産中断、暫定や緊急処置が要求される。もちろん、クレームの発生原因の究明及びその徹底した再発防止としての是正処置は、必要不可欠な実施事項である。

 

 次に“工程内検査(含む受入検査)における不適合品”に対する主要な「不適合品処理機能」について述べる。ここでも最初に実施することは、不適合品の内容確認である。検出された不適合品を除去するために、追加加工により図面やスペックの要求事項どおりに“手直し”可能な場合には、それを実施すればよい。但し、ここで注意する点は、熱処理や溶接等ではスペックで再処理や追加加工が許容されていない場合があるので、顧客要求事項であるスペックの精緻な解読・理解が必要となる。
 更に注意する点がある。高額材(例えば、チタン材)が不適合品として検出された場合には、経済性の観点から救済したい。しかし、「一貫生産」を受注する委託先(受託)企業は、製品・部品の「設計機能」を持っていないこと (製品・部品の設計権が無い)が一般的と考えられるので、したがって、その判定を顧客に委ね、顧客の承認を得ない限り、そのまま使用又は修理の処置をとることは絶対許されない。
 また、判定を顧客に委ねて、顧客が技術的検討(設計計算、互換性、置換性等の観点から検討)するわけであるから「不適合の内容」については、不適合の発生部門だけではなく、品質管理担当部門の確認を得て、顧客に特別採用申請(再審申請)を提出する必要がある。
 不適合の発生原因の究明及びその徹底した再発防止としての是正処置は、“顧客クレームへの処理”と同様に求められる。

 最後に、“顧客クレームへの処理”及び“工程内検査(含む受入検査)での不適合品”の両方に対して求められる重要事項を2つ述べる。
 一つめは、“廃棄と判定された製品・部品の処理”である。前述した様に、航空機や宇宙機器の高い信頼性や安全性の確保の観点から、廃棄品が間違って製品や部品として後工程に流されたり、顧客へ出荷されないように処置・管理することが必要となる。そのためには、物理的に使用できるまで、判り易く、かつ、永久的な印を付けて、原形が残らない程度に変形しておくことが求められる。
 二つめは、“とった是正処置の有効性のレビュー”である。これは、取った是正処置の実行によって、本当に当該の不適合品の発生が止まったのか、を確認することである。クレームの撲滅や工程内不適合の削減には、絶対欠かせない活動であり、この「不適合品処理機能」の仕組みとして組み込むことを忘れないで欲しい。

 次回(11回)においては、「日程管理機能」に関して解説する。

文責:小山 隆一

連載コラム 第11回 「一貫生産」における”日程管理機能”

(2012年5月21日)

「一貫生産」を受注する委託先(受託)企業に求められる9つの機能(品質マネジメントシステムにおける製品実現プロセス)の内、今回は最後の9つ目の「日程管理機能」の解説をする。

生産管理の3要素、QCD(Quality、Cost、Delivery)は、どの業種及び業態においても基本中の基本事項であることは言うまでもない。
 ISO9001要求事項では、この生産管理の3要素のQ以外に関する直接の要求事項は無いことを認識しておられる多くの読者諸兄にとっては、「一貫生産」を構成する機能の解説の本稿において、わざわざ最後の9つ目の機能として「日程管理機能」を記述することに違和感を覚えることと思う。

 JISQ9100:2009では、顧客重視(5.2項)及び顧客満足(8.2.1項)の条項において、“製品要求事項の適合性(製品品質、すなわちQuality)に加え、納期どおりの引渡し(Delivery)に関するパフォーマンスを監視・測定し、かつこの納期に関して特定された課題があれば、修正処置及び/または是正処置を取らなければならい”と規定されている。この様に航空宇宙産業におけるQMS要求事項では、QDに関する監視・測定及び改善が明確に要求されたため、「日程管理機能」が他業種以上に重要な機能となった。これが「日程管理機能」を9つ目の機能とした理由である。従って、航空宇宙産業の「一貫生産」を受注する委託先の企業は自社のQMSに、この「日程管理機能」を強く意識して組み込むことが欠かせない。

 「日程管理機能」は、今まで解説して来た全ての8つ機能と関係性を持たせる必要がある。 なぜならば、8つの機能で“日程”を持たない機能は皆無だからである(下図参照)。
 特に、日程管理する上で、「不適合処理機能」との関連性の確保を忘れてはならない。不適合処理途上にあるアイテムの進捗状況、例えば、製造担当部門が是正処置を検討中なのか、あるいは、保留中で顧客の設計部門が検討中なのか等“見える化”が出来るようにしなければならない。
さもなければ、不適合製品の進捗状況が“見えなく”製品(部品)の納期遅れにつながる。

 日程管理でもう一件指摘しておきたい事項は、日々の精度の高い日程計画の立案及び実態監視による必要な即時の日程計画の調整・修正である。このためには、製造現場及び外注工場の能力・余力の常時の把握、計画へのフィードバックの仕組みの構築が欠かせない。

 他の機能との関連性に関しては、一般的な“生産管理”の話になるので、他者の解説に譲りたい。

 

 次回(12回)においては、本稿の最終回としての「まとめ」を記載したい。

文責:小山 隆一

連載コラム 第12回:最終回 「一貫生産」のまとめ

(2012年6月04日)

 「一貫生産」を受注する委託先(受託)企業に求められる9つの機能(品質マネジメントシステムにおける製品実現プロセス)を順次解説してきたが、今回は本稿の最終回として「一貫生産」のまとめを記載する。

先の読めない世界の中で企業の継続的な存立を行うためには、経営者の強い意志の下で戦略的な計画を持ち、事業を推進することが、どの業界・業種においても欠かせないことは論を待たないであろう。ここで言う“戦略的”とは、自社の強みを明確に認識し、自社が戦う市場・製品を明確に選択することを言う。他社と差別化できる技術・技能としての強み(コアコンピタンス)の重要性については、第8回で述べたが、ここでその重要性について繰り返して強調しておきたい。

航空機としてのシステムは、大別して機体構造体、エンジン及び搭載装備品に分けることができ、機体構造体における加工領域だけを見ても治工具製作からワーヤーハーネスのように非常に広範囲に亘る(下図参照)。
 「一貫生産」を受注する委託先(受託)企業は、少なくとも自社の強みである加工領域は、自社内で処理すべきであろう。強みである加工領域に加え、他の領域を開拓して自社内の処理領域を拡大して、自社内処理領域の広い「一貫生産」メーカーを目指すことが顧客からの信頼を得る道筋であろう。

 

 次に、「一貫生産」を受注する委託先(受託)企業が考えなければならないことは、サプライチェーンのどのレベルの「一貫生産」メーカーを狙うかである。構造体分野では、航空機の運用顧客(エアライン)に直接納入するプライム・メーカーを頂点したサプライチェーンにおいて、一般的に一部構造体組立作業(含む艤装作業)を担当する一次受託メーカーを狙うか、この一次受託メーカーの下で部品を完成体として納入する二次受託メーカーを狙うか、が考えられる。一次受託メーカーを狙う場合には、部品を完成させる、部品を集めるという機能に併せて部品を組み立てる、艤装するという機能が求められる。二次受託メーカーを狙う場合には、部品を完成させる、部品を集めるという機能が求められる。どちらを狙うかは、現在の組織の規模や強みに大きく依存するが、二次受託メーカーから一次受託メーカーへリスク評価しながら段階的な展開を行うのが、常識的な展開方法であろう。

 一次受託メーカーの場合は、設計・開発作業も併せて担当する場合が多く、この場合には、今まで解説した9つの機能に加えて「設計・開発機能」が要求されることを補足しておきたい。

 また、他社との連携も一つの「一貫生産」を担う受託メーカーの形態とは思うが、顧客(プライムメーカー、一次受託メーカー)から見た場合には、製品の品質及び納期の責任はあくまで1社にあるのであり、複数社にあるのではないことを忘れてはならない。

 ほぼ半年間連載してきた「一貫生産」の解説は、以上で終わりとする。お付き合い頂いた読者諸兄には深謝する。本稿に関してご意見等を頂ければ幸甚である。

文責:小山 隆一