【連載コラム】 JIS Q 9100内部監査を考える


連載コラム 第1回 内部監査を考える:経営者の期待と姿勢 ―自ら監査を実施―



1.はじめに

 日本で内部監査の実施が大々的に採り上げられたのは、ISO9001,ISO14001の普及によるところが大きいと思います。それは、両マネジメントシステム規格が「内部監査」の実施を要求しており、ISO9001,ISO14001認証取得するにためには内部監査は必須の事項であったからにほかならなりません。また、組織での不正、偽装等の対策の一つとして内部監査機能の強化が叫ばれてきたという背景もあります。

 JISQ9100,ISO9001活動に対して、内部監査に費やしている企業のエネルギー(労力)は、監査員の養成、監査計画の立案、チェックリスト作成、監査の実施、監査報告書の作成、是正計画の立案、マネジメントレビューでの報告等に多くの時間を割いております。
 経営ツールとして内部監査活動を実施する(しなければならない)としたならば、活動をデメリットと思わずに経営に役立つように切り替える必要があります。
 内部監査の成否は、関係者すなわち、@経営者の姿勢、A主管する管理責任者の計画、B監査員の資質と力量、C被監査側の協力等に依存しております。

 本連続コラムでは、上記を踏まえて当社主催セミナー、出張セミナー、また実際監査(企業様へのQC診断)の経験をとおして、内部監査の改善案を提示していきます。



第1回 経営者の期待と姿勢 ―自ら監査を実施―

 JISQ9100, ISO9001の要求事項に基づく内部監査は、経営者が監査員に、組織の品質マネジメメントシステムが、規格、内部規定、適用法規制、各種手順書、品質目標と計画書等に基づき、適切(Conformity)かつ有効(Effectiveness)に運営され、機能しているかを監査する経営ツールの一つとされています。したがって、その期待(ここでは規格要求の期待)は大きいはずです。
 ここで“はずです”といったのは、JISQ9100,ISO9001認証取得した組織のトップマネジメント(経営者)が、本当に期待しているかというと疑問があるからです。

2.現状
それは、@1年に一度の内部監査計画も十分に実施されていない。A外部監査の直前に何とかお茶を濁している。B監査(内部監査、外部監査ともに)の指摘件数は、少なくするように指示している。C重大な不適合数件について、経営者自ら内容を確認し掘り下げて確認していないなどに代表されます。確かに、経営者としては、経営の優先度、重要度からすれば、内部監査は低いといえるでしょうが(確実に実施している組織の皆様には、失礼をご容赦下さい)。


3.提案

(1)経営者自ら内部監査(トップ診断)を実施する

 中・小規模企業であれば、各部門1時間、1日で、重点事項について実施する。大いに内部監査に対する意義と監査員、被監査側のモチベーションが高まります。
 TQC,TQMが盛んなころには、トップ診断として、経営者が各部門の業務・活動の実施状況をヒヤリングすることで直接把握し、改善を促進する活動でした。これを内部監査として監査事務局が計画して実施することがよいと思います。

(2)方針管理の一つとしてフォローする

 経営者は、経営方針、経営目標を策定し、実行計画を立てさせて定期的にフォローしていると思います。この一部として、品質方針→品質目標→品質計画→実施→フォロー(評価)を組み入れることがよいと思います。
 JISQ9100:2009年版での認証機関による監査は、適合性監査に加えて有効性監査の実施がなされています。有効性の監査については、方針管理、日常管理に対する実施状況が対象となります。下表のように実施するのも一つの方法です。



(3)内部監査での指摘件数を多くすることを歓迎する。

 内部監査において、指摘件数が多いということは、改善の余地が多々あるということです。経営者は、これを歓迎してほしいと思います(少なくしなさいということは、改善の目をつぶすことです。もっとも、重箱の隅をつつくような指摘については、十分な注意が必要ですし、いつまでも不適合件数が多いというのにも問題はありますが、これについては別途解説します)。

(4)マネジメントレビュー時に、監査の結果について深く確認・レビューする。

 監査の結果、重要指摘事項3件ぐらいについて、指摘内容(不適合内容)、是正計画、日程等について、深く確認とレビューを行い、明確な指示を行う。。

 なお、提案については、すべてについて実施することを進めているわけではありません。この中の一つでもされれば、経営者の内部監査に関する期待と姿勢が社内に伝わると思います。 内部監査が効果あらしめるには、経営者の姿勢一つといっても過言ではないと思います。

参考:当社では、下記の内部監査に関するコンサルティング、セミナーを実施しております。 

カスタム出張セミナー(内部監査員養成) ・お客様のご要望(範囲、レベル、日数、内容)を伺い、
 カリキュラムを提案させていただき承ります。
内部監査員レベルアップセミナー(1日)
(東京、愛知、神戸にて公開セミナー)
・顧客要求、経営方針、規格の意図など、プロセスの
 目的を理解して監査できる。(中・高級レベル)
内部監査員養成セミナー(2日間)
(東京、愛知、神戸にて公開セミナー)
・規格、品質マニュアル、作業手順書を体系的に理解
 して評価し、実施状況を確認できる。(標準レベル)
代行内部監査の実施 ・お客様のご要望をお聴きし、品質マニュアルを基に、
 チェックシートを作成し、お客様に代わって内部監査を
 実施します。監査報告書も提出します。
・企業様監査員と共に内部監査を実施し、OJTによる
 リーダー監査員を養成する。

文責:門間 清秀


連載コラム 第2回 内部監査を考える:現象の指摘とシステムの不適合 ―その事例,対策と原因―



1.現象の指摘とシステムの不適合 事例1

 ある企業様へ内部監査の指導として立ち会った際の事例です。航空機部品の塗装部品、塗装工程の適切さの製品監査です。製品が現場に製造される日を被監査部門と調整して監査に臨みました。

 塗装現場は2か所あり、まず1か所は最新鋭機体のA現場で、他方は従来機種のB塗装現場です。A現場では、2部品の塗装膜厚を計測したら規格要求事項を満足しており、作業手順書も細部にわたり記述され、作業もそれに従って実施されていました。

一方、B現場にて一つの部品の塗装膜厚を計測したら規格要求事項を満たさず、また別な部品を計測したら、同様に塗装膜厚が規格を外れていました。作業手順書は内容も最新版にされておらず、作業も古い手順書に従って実施されていました。

 これを深くなぜこのようになっているのかを作業環境状況を監査の過程で確認していくと、A現場は企業社員が直接実施しており、現場の整理整頓の状況もよいことが確認されました。他方、B現場は構内請負の会社が実施しており、整理整頓も非常に乱雑であることがわかりました。

 ここで製品監査の観点から見れば、B現場の“2部品の塗装膜厚が規格要求事項を○○外れた”という指摘になり、製品に対する不適合報告書が発行されることになります。

これは、間違いではありませんので不適合と指摘し、製品を修正する必要があります。それだけでは、再発防止の是正処置に結びつきません。B現場の製品品質が規格要求を満足しないことは、一連の塗装プロセスを考えると根が深いものがあるようです。

B現場では、作業手順書、作業そのもの、製品の塗装検査、そして作業環境に至る塗装プロセスの管理全般が悪いということです。監査の対象が製品とはいえ、組織から見れば構内請負会社に対する「アウトソース」の管理が悪いという「不適合」を発行するのがよいとうことです。

今までB現場のサプライヤに対する評価はどうなっていたのでしょうかと疑われます。現象が起こった背景の状況を確認してシステムの不適合として指摘し、QMSの的確な是正処置ができるというものです。


2.内部監査セミナーでの事例

 顧客支給治具の改修に係るケーススタディの事例です。  B社は、A社から治具の支給を受けてある航空エンジン製品(クリティカル部品)を加工して納入するという状況です。その際に、A社から品質管理仕様書で、すべての工程変更は事前にA社に変更申請し承認を得ることになっていました。

 監査員が、現場審査でA社より支給されている治具が改修されているので、改修前に変更通知を提出して、承認を受けているかを確認しました。ところが、被監査側の対応者は、“A社に治具の改修を依頼したのですが、改修の予算がないから当面改修を見送るという通知がきました。当社としては、加工の生産性を上げるために、改修が必要と判断して当社の費用で改修しました”との回答がなされました。

 続けて、監査員は、“改修した治具を使って初品加工した際、製造工程の検証(初回製造品検査)を実施しましたか”と質問したら、担当者は“当社としては初回製造品検査を実施しましたが、A社には報告していません”という回答がありました。

 さて、この監査状況のセミナーのケーススタディで、次のような不適合の指摘がありました。

@指摘1 顧客支給治具を顧客承認なしに改修するのは問題であり、不適合に相当する。その根拠
       は、7.5.4顧客所有物の管理に違反する。あるいは、顧客所有物を勝手に改修することは
       商慣習上許されない。

A指摘2 初回製造品検査を実施したが、その実施した初回整合品検査の情報(記録)を顧客に報告
       していないのは、7.4.1購買情報h)あるいは顧客の「品質管理要求事項」に違反している
       ので不適合である。


 なるほどと思えるようですが、これは事象の指摘です。もともとこの事象の背景は一つと考えるのが妥当ではありませんか。

@では、顧客の承認を得て工程変更、すなわち改修を行うことが必要と考えていたと思われます。したがって工程変更手続きをしたが予算がないとの理由で承認されなかった。

Aは、治具の改修という工程変更したので“製造工程の検証(初回製造品の検査)”実施した。

しかし、結果をお客様に報告していなかった。このことはQMS上の本質的な問題ではないし、お客様の承認なしに治具を改修したことにより、初回製造品の検査の結果を報告し難かったという状況があったかも知れません。

 指摘1については、このような“顧客承認なしに改修”は、厳に実施してはならないことを指摘すべきです。一方、お客様から“改修の予算がないから当面改修を見送る”という通知に対する解決の方策、提案を知らなかった、あるいはやらなかったというのが本当かと思います。
 お客様に“費用はいりません。当社の費用で改修します”と提案すれば良いと思います。このような討議、会話が内部監査で行われれば、生産性のある内部監査になると思います。事象の指摘をするのではなく、現象、事象の背景を深く討議しあって、システムなり、改善の方策を見つけることが重要と思います。

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 目的を理解して監査できる。(中・高級レベル)

文責:門間 清秀


連載コラム 第3回 内部監査を考える:被監査部門の啓蒙  



1.被監査部門の業務プロセスの再確認

(1)QMSの切り口で見る
 もともと被監査部門の業務プロセスに精通しているのは、被監査側であることは明確です。 ただし、品質マネジメントシステム(QMS)という切り口で担当の業務プロセスを見ていない(考えていない)ということが実態と思います。それには、被監査側が業務プロセスをQMSという切り口で、時には確認するということが大切です。

@規格の要求事項を理解する
 JISQ9100規格要求の用語が、通常の業務において使用している用語
 と異なり、理解し難いことを克服する必要があります。

規格の用語が、一般的な用語になっただけで、監査側との対応が容易になります。

A品質マニュアルで該当業務プロセスの内容を確認する
 品質マニュアルのすべてを理解する必要はなく、被監査部門(被監査プロセス)として業務に関係する項目を理解する。製造部門(製造プロセス)であれば、7.5「製造及びサービス提供」、8.3「不適合製品の管理」、8.5.2「是正処置」、4.2.4「記録の管理」等の項目に的を絞った理解で十分です。

B顧客の契約要求事項を確認する
顧客の契約要求事項といっても、該当被監査側(該当プロセス)に関係する顧客のQMS要求事項を主体として確認する。通常は、営業部門もしくは品質保証部門で保持しています。

 上記のA及びBについては、業務遂行上理解しておかなければならない事項であり、品質監査を受審するためにだけ必要な事項ではないはずです。


2.被監査側が内部監査員より当該業務プロセスを理解し、業務を遂行する

 本来、被監査部門は被監査業務プロセスについては、業務内容を精通していなければなりません。それをQMSという切り口で業務プロセスを見ているにすぎません。
航空宇宙産業に要求される(1)@ABの要求事項を認識し、その業務実態を確認しておけば内部監査、あるいは外部監査の受審は全く恐れるに足らずと思います。


3.具体的に被監査部門のレベルアップをどうするか・・・ある企業様の事例

 すべての管理者(係長、主任、課長)は、JIS Q 9100規格の理解とJIS Q 9100内監査員養成コースを必須事項として修得させていることです。管理者の昇進直後に“管理者必須講座とすれば、教育プロセスとしてのシステム化となります。セミナー受講者全員を内部監査員に選定するわけではありません。
 被監査部門の管理者が、社内の品質マネジメントシステムを理解し、運用し、時折、内部監査員の立場で業務を監視するということが目的なのです。

蛇足:製品の品質を確認・保証する測定機器の精度レベルは、作業者の測定機器の精度レベルの
    方が、品質保証部門の使用する測定機器の精度レベルより高いものを使用するのが原則で
    す。これを逆にすると“作業工程で不適合が抽出されず、後工程の検査工程で不適合品が
    検出される”ことになり、損失を大きくします。内部監査においてもこれと同じ考えです。



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 して評価し、実施状況を確認できる。(標準レベル)

文責:門間 清秀


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連載コラム 第4回 内部監査を考える:内部監査の基本  ―プロセスの適合性監査―



1.プロセスの適合性

 プロセスとは,“インプットをアウトプットに変換する,相互に関連する又は相互に作用する一連の活動”と定義されています。なかなか分かりにくいのですがプロセスの具体例として,営業活動,設計活動,購買活動,製造活動,不適合製品管理活動,教育訓練活動等々が挙げられれば,理解していただけると思います。
 これらのプロセス(活動)に対して内部監査を実施し,“適切に運営されている”ということを“プロセスの適合性(Conformity)がある”といいます。問題は,“何に対して適合性があるか”ということです。当然ながら,監査基準への適合性です。

2.監査基準

 品質マネジメントシステムに関する監査基準は,顧客の要求事項,法規制の要求事項,JISQ9100の要求事項及びこれらの要求事項から組織が定めた品質マニュアル,細部規定等です。もちろんこれだけではなく,製品に関する図面,スペック,作業手順書等も監査基準になります。監査基準については次回に述べるますのでこれくらいにしましょう。

3.プロセスの適合性の監査

 内部監査の基本は,プロセスの適合性を監査することです。
 決められたこと(顧客の要求事項,法規制上の要求事項,JISQ9100要求事項)及び決めたこと(品質マニュアル,細部規定,図面,スペック,作業手順書等)に対して,運用状況を確認することが内部監査の基本です。
 法規制上の要求事項を遵守しているかを監査することは当然として,顧客の要求事項を満たし,品質マニュアル,細部規定とおりに業務を行っているかを監査することです。
 なお,注意を要することは,顧客要求事項,品質マニュアル,細部規定等が必ずしも適切でない場合があるということは理解して欲しいと思います。それは,監査基準間の整合性がとれていない場合,また顧客要求事項,品質マニュアル,細部規定そのものが法規制を逸脱している,品質マニュアル,細部規定が法規制,JISQ9100規格要求事項と矛盾している場合があるからです。



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 目的を理解して監査できる。(中・高級レベル)

ご意見等のある方は、こちらにご連絡いただければ幸いです。info@tfmc.co.jp

文責:門間 清秀


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連載コラム 第5回 内部監査を考える:内部監査の基本  ―監査基準の理解―



1.監査基準
 航空宇宙産業における内部監査の基準は,@顧客の品質マネジメントシステム(QMS)要求事項であり,提供する対象製品・サービスに関係するA法規制上の要求事項,また,B顧客のQMS要求事項から引用されるJIS Q 9100,そしてC @ABから組織が制定した品質マニュアル,細部規定,細部要領書等です。

2.顧客のQMS要求事項
@ 顧客のQMS要求事項についての代表的な組織の例として,下記があります。
  ・Boeing Document
    “D6-84279:Boeing Quality Managements System Requirements”
  ・GE Aviation Sourcing Quality Specification
    “S-1000:Quality System Requirements for Suppliers”
  ・防衛省仕様書“DSP Z 9008:品質管理共通仕様書”
  ・三菱重工業名古屋航空宇宙システム製作所:“MSJ4000:品質マネジメントシステム要求”

 これらの品質マネジメントシステム仕様書からAS9100/JISQ9100を引用はしていますが,その他に組織としての独自の記録の管理,特殊工程の承認,不適合製品の管理,ソフトウエアの管理,治具等々に関する要求事項が記述されています。したがって,当該企業にとっての顧客のQMS要求事項を把握して,監査のチェックリスト作成,監査に臨む必要があります。

3.法規制上の要求事項
 A顧客に提供する製品及びサービスが決まれば,適用となる法律,施行規則等が決まります。
日本での航空機に関係する法律としては,航空機製造事業法,航空法,電波法,火薬類取締法等があります。QMS要求事項としては,航空機の安全性確保の観点から航空法,航空法施行規則,サーキュラーが関係します。いずれにしましても,企業としてどの法律のどの要求項目が関係し,どのように対応するのか事前に調査して監査に臨む必要があります。

4.JIS Q 9100及び組織が制定した品質マニュアル,細部規定,細部要領書等
これらが監査基準となることは当然ですので省略します。

5.製品仕様書,図面,スペック,作業手順書,検査手順書等
 これらは技術的要求事項ですが,製品監査を行う際には監査基準となります。また,特殊工程におけるNadcap監査については,契約書,注文書から製品仕様書,図面,スペック等に至る契約のフローダウンが確実に繋がっているか確認することになり,契約書,注文書等も監査基準となります。

文責:門間 清秀


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連載コラム 第6回 内部監査を考える:内部監査の基本  ―効果的な内部監査―



1.プロセスと有効性
 まず、この“プロセスの有効性”という意味から考えてみましょう。“プロセス”とは、“インプットをアウトプットに変換する,相互に関連する又は相互に作用する一連の活動”と定義されています。分かり易くその例としては、品質マネジメントシステムに関しての受注活動、設計活動、購買活動、製造活動等々が相当します。
 一方、“有効性”とは、“計画した活動が実行され、計画した結果が達成された程度”と定義されています。このことは、計画(Plan)又は標準化(Standardize)したことが、実行(Do)され、実行された結果の程度を評価(Check)することと考えることができます。つまりPDCA又はSDCAの管理サイクルPDC, SDCのことです。
 したがって、プロセスの有効性監査とは、設計活動、購買活動、製造活動等々を計画し、実行し、評価しているかを監査することです。

 

2.プロセスの監視及び測定
 プロセスの監視及び測定については、規格JISQ9100の8.2.3項の要求事項です。8.2.3の要求事項は、次のような内容です。

 この8.2.3項は、“計画とおりの結果が達成できない場合には、適切に、修正及び是正処置(Act)を取らなければならない”と規定しております。つまり、PDC又はSDCという有効性に加え、“計画とおりの結果が達成できない場合には、是正処置(Act)を行いなさい”と規定していますから、PDCA又はSDCAの管理サイクルを廻しなさいと要求しているわけです。
 そうしますと、QMSを構築する際に、“各プロセスを、誰が、どのような頻度で、どのような方法で監視及び測定するか”を決めておかなければなりません。また、それに基づいて運用しなければなりませんが、もともとこのことは通常の業務を明文化して実行するということに過ぎないのです。“言うは易し、行うは難し”ですが・・・。

 認証機関がJIS Q 9100:2009年版の審査の前に、企業に“プロセスを定義し、そのプロセスの責任者(プロセスオーナー)を明確にし、そのインプットとアウトプット、プロセス(活動)を運用するための資源(人、設備、方法)を明確にし、さらに管理指標と管理値を定めて実行しておいてください”と要請されているようです。認証機関がプロセスアプローチの手段でプロセスの有効性審査を取りいれている訳です。

 これらを品質マニュアルなどに明確にする方法としては、タートル図で明確にする方法等がありますが、これについては省略します。

3.プロセスの有効性監査
 上記から“プロセスの有効性監査”は、8.2.3項の要求事項に対し内部監査を行うということにもなります。したがって、内部監査の前に被監査側と “該当プロセスの監視及び測定”は“誰が、どのような頻度で、どのような方法で監視及び測定する”ことになっているかを確認し合って、監査に臨むことが肝要です。

文責:門間 清秀


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連載コラム 第7回 内部監査を考える:不適合の指摘と責任追及
                    ―福島原発事故調査・検証委員会「中間報告」より―



1.不適合の指摘
 内部監査の実施においては、品質マネジメントシステムの監査基準に照らして適合していなければ、不適合として不適合報告書が発行されます。通常起こりうる運用上の不適合事項については、責任追及の話は出てきません。しかし、法律違反、製品品質に重大な影響を及ぼし、製品の廃棄、リコールともなればどうしても責任問題の話が出てきます。

2.根本原因の追究
 製品検査で発見した不適合製品と内部監査では検出したプロセスの不適合という、検査又は監査基準に対する「不適合」という点では同じです。異なるのは対象であり、不適合のもたらす影響と思います。
 不適合の再発を防止するためには、事実を把握し、根本原因を追究してはじめて、その根本原因を取り除く是正処置計画を作成することができます。

3.不適合発生の責任追及の棚上げ
 この根本原因を追究する過程で、製品品質に重大な影響を及ぼし、製品の廃棄、リコール、法律違反そして人身事故等に発展しますと否応なしに責任追及の話が出てきます。しかし、根本原因追究の段階では、決して責任追及を行はないことです。責任追及の話をした途端に“真実を明らかにしない恐れ”が出ます。これは人間の心理として当然のことです。


東京電力福島原子力発電所における事故調査・検証委員会「中間報告」平成23年12月26日の 中で次のような方針を出して調査・検証活動に入りました。
(HP参照:http://icanps.go.jp/111226Honbun1Shou.pdf )


 3.当委員会の基本方針
  D 責任追及は目的としない

 事故を取り扱うとき、原因究明と責任追及とはしばしば対立する。多くの人は、原因究明も責任追及も両方行われなければならにと考えている。
しかし、真の原因究明のためには、事故に関わった人たちに、どのような出来事が起こり、どのようなことを考えて、どのような行動を取ったのかなどを、包み隠さず語ってもらうことが必要である。

関係者が責任追及をおそれてありのままの事実を語らなければ、事故の全体像をとらえることは不可能である。それ故、当委員会は、責任追及を目的とした調査・検証は行わない。

 当委員会は、この事故から学び、後世の人たちの判断や行動に役立てるため、事故が起こった後で、出来事を俯瞰し、事故の発生や被害の拡大を防ぐためにはどうすればよかったのかを明らかにしようとしている。
しかし、事故に関わった人たちは、その時、自分の身の回りで起こっていることや外部から与えられた情報だけを基に行動している。そのような当事者の判断や行動を、後から全体を見れば適切でなかったという理由で攻めることは、慎むべきであると考えている。

 内部監査においても、非常に参考になる。

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文責:門間 清秀


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連載コラム 第8回 内部監査を考える:内部監査と外部監査  ―認証機関の監査―



1.内部監査の最大の利点と不利な点
 内部監査を行う上での利点は、社内他部門の業務内容、製品の機能、特性の概要がわかるし、さらに詳細を知ろうと思えば、製品に関する作業指示書、作業手順書、購買文書、それらの記録をみる機会がある。品質マニュアル、細部規定も確認しようと思えば、監査前に何度も確認できる。事前調査には事欠かない。

 しかし、他部門の業務プロセスを監査するのが基本であるから、知る機会があっても努力しなければ知ることはできない。
 一方、不利な点といえば、監査の専門家でなく、監査の回数も非常に少ないであろうから、規格の理解、監査のコツ、場慣れといった点で指摘事項がシステム的でなく、現象の指摘に留まることが多い。


2.認証機関による利点と不利な点
 一方、認証機関の審査の利点、不利な点は、内部監査とは逆のことが言える。企業を訪問して審査するのは、多くて年1回2,3日の程度であり、企業情報はインターネットの情報か、前回審査時の審査員の申し送りノートに限られる。しかし、監査員は該当業界の専門家ということを考慮すれば、あまり不利な点とも言えない。
 一方、利点は、監査の専門家であり、監査の回数も多く、規格の理解、監査のコツ、場慣れといった点で内部監査員よりはるかに監査のレベルは高い。監査のプロであるから当然のことと言えば当然である。


3.認証機関に求められる監査と状況
 認証機関の監査、すなわち認証機関の審査員に求められるのは、監査の専門家として審査対象組織の品質マネジメントシステム、プロセスの運用状況が適切かつ効果的に運用されているかを監査することである。“言わずものがな”なことである。

 さて、JIS Q 9100:2009要求事項に改正されて約3年、2009年版での本格審査から1年半ほどが経過した。2009年版に対する認証機関の審査はSJAC9101D「品質マネジメントシステム航空、宇宙及び防衛分野の組織に対する審査要領」で示されており、その審査要領は改訂前のSJAC9101Cにくらべて様変わりした。

 その審査手法のポイントは、次の3点である。

(1) 顧客重視・・・顧客の要求事項と顧客のサプライヤへの評価を基にした審査
(2) QMS,プロセスのパフォーマンスと有効性の審査
(3) 重点審査・・・製品実現のプロセスに焦点をあてた審査

 その中でも(1)については、顧客重視の観点から審査に先立ち、組織に対して次の事項の提供を求め、その後に審査に入っていることに表れている。

@ 組織の航空、宇宙、防衛事業分野の収入が全収入に占める割合% 
A 主要顧客名とその顧客の事業に占める割合% 
B 主要顧客の組織に対する品質パフォーマンスと納期パフォーマンスに対する評価傾向
C 顧客からの組織に対する承認状態とQMS要求事項

このことから認証機関の審査は、顧客の代理人として審査していることを意味している。


では、2009年版による約1年を経過した時点での認証機関の組織への審査の状況は、どうなのだろうか。認証機関の審査に立ち会って確認したわけではないが、当社または私が認証取得支援を実施した企業への審査の結果報告書を見る限り、指摘件数、指摘内容ともにあまり変わっていない。メジャーな不適合の指摘事項は、まず見あたらない。変わっているとすれば、第1段階審査において指摘を多くしている認証機関があり、それは喜ばしいことである。顧客の代理人として監査をしているわけであるから、適合性、有効性のないところはしっかりと指摘することである。それが組織及びその組織の顧客に利益に繋がる。

 しかし、現在までの審査結果に対して、期待はずれの感をもっている。このように断定するのはまだ早いかも知れない。

 それは、審査を受けている組織及び認証機関の双方の認証制度に対する姿勢に問題があると思っている。

 審査を受けている組織が、指摘を受けてQMSそして最終的には製品品質、納期の向上を期待しておらず、単に認証取得することにだけ意義を求めている組織が結構いることである。

 認証機関の審査員が、審査を受けている組織を、顧客として遠慮している(指摘をして悪い子になりたくない等いろいろな理由があると思うが、それを挙げても意味がないのでこれぐらいにする)ということが、その背景にあると思っている。

 もともと認証制度は、性急な成果を求めることではなく、継続的改善にあるのだから一歩一歩着実な改善に繋がると思えばよい。その点から、あまり外部それも認証機関の審査に過大な期待せず、組織自身の監査側も被監査側も、内部監査はもちろん品質管理活動に力を入れて、QMSのみならず製品品質、納期のパフォーマンス向上に努めることが、組織の品質保証活動の王道と思っている。

文責:門間 清秀


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連載コラム 第9回 内部監査を考える:Nadcap監査  ―内部監査とJob Audit―



1.Nadcapとは
 Nadcapとは,米国のNPOであるPRI(Performance Review Institute)が認証機関として,航空宇宙産業界における特殊工程(熱処理,表面処理,溶接,複合材成形,非破壊検査等)作業に対する適合性を,顧客に代わって認証する国際的な認証制度である。


2.AC及び顧客要求事項
 特殊工程毎にAC(Audit Criteria)と呼ばれるチェックリストがPRIにより準備されています。例えば,熱処理全般についてはAC7102Rev.F,及び熱処理の中でも浸炭処理についてはAC7102/3Rev.Aといったように準備されています。
 ACの質問事項で“顧客要求事項による”と表現されている場合は,被監査組織の顧客の個別要求であるプロセススペックあるいは公共規格にしたがう必要があります。


3.Nadcap認証機関の監査の中心はJob Audit
 Nadcap監査の最大の特徴は,Job Audit(作業監査)です。Job Auditとは,実際の製品に関する受注時の顧客の注文者から特殊工程作業の完了までのすべての工程に対して,顧客の要求事項を満たしているかを確認する監査です。


4.Nadcapの内部監査
 Nadcapの監査を最初に受審する際に,企業における効果的な内部監査の実施方法(準備,実施,実施,結果の整理,是正処置)として次のステップで推進することを勧めます。

(1)内部監査の準備
   @ 監査基準の準備
   A 内部監査用チェックリストの作成

(2)内部監査の実施
   @ 会議形式の内部監査(第1段階監査)
   A Job Audit(第2段階監査)

(3)内部監査結果の整理

(4)是正処置の実施及び処置結果の確認


 基本的には,品質マネジメントシステムの内部監査と変わりはありません。ここでNadcapの(内部)監査の最大の特徴であるJob Auditについて詳しく述べます。

 Job Auditの対象となる製品は,企業の顧客であるプライムから委託されている製品で,継続的に製造している製品を選定することです。そして,選定した製品の顧客から注文書及び/又は契約書の内容を確認します。

 これらの契約文書から呼び出される製品図面,プロセススペックを確認し,該当する顧客要求事項が企業の作業手順書等の文書に盛り込まれているかを確認します。このことを,NadcapではFlow Down(フローダウン)と呼んでいます。

 続いて,この要求事項に盛り込みされた作業手順書等の文書に従って,作業者が実際の特殊工程作業を行っているかを確認します。

 最後は,作業結果が決められたとおりに記録されているかの確認を行います。これら一連のJob Auditにおける確認ポイントを下表に示します。

Job Auditにおける確認ポイント

区分 確認ポイント
 Flow Downの確認 ・顧客のプロセススペックの中で呼び出されている公共規格や関連スペックの
 該当する内容まで細部にわたって確認
・要求事項は,直接の顧客のものではなく,最終製品の顧客であるプライムの
 要求事項であることを確認
・Flow Down違反(顧客であるプライムの要求事項に従っていない)は,Nadcap
 監査においては,Major Finding(重大な不適合事項)に繋がるので,慎重に
 確認
作業の確認 ・作業者が,本当に作業手順書等の文書を見た後に作業をしているかを確認
・作業者は,なぜ作業手順書等の文書で規定された条件を順守して作業しなけ
 ればならないかを理解しているか,作業本人に確認
記録の確認 ・記録が鉛筆ではなくボールペン(最近は消えるボールペンがあるので,それは
 避けること)を使用,訂正は二重線による見え消し,訂正理由の記述及び
 サイン又は捺印が徹底されているかを確認

参考:以上の内容は,当社発行「JIS Q 9100航空宇宙産業の内部監査の手引き 第6章Nadcapに
    対する内部監査」から抜粋したものです

文責:門間 清秀


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連載コラム 第10回 内部監査を考える:QMSレベルアップには 
                            ―被監査側管理者のレベルアップ―



1.システム監査
 ISO9001が制定されて以来、認証機関による審査、組織の内部監査は、ともに「システム監査」を指しています。ISO9001、ISO14001等の規格に、組織のマネジメントシステム運用状況が適合しているか否かを審査・監査するという観点から「システム監査」と称しています。
 航空宇宙製品の品質保証の手段として、製品が図面に合致しているかを検査することはその一部にすぎず、高度な設計、多岐にわたる部品製造、複雑な組立と試験工程を経てはじめて完成するために品質保証の仕組み、すなわちシステムで保証していこうと発展してきたのですから、システム監査の実施は、必然的な帰結なのです。

しかしながら、偽造、記録の改ざん、工程飛ばし等々の問題が、内部告発等で明るみに出ると多くのメディアは、認証機関の審査はどうなっているのか、機能していないのではないかと騒ぎ立てます。しかし、1年に1回、それも2,3日組織を訪問し、数時間で各業務プロセスの運用状況を審査します。しかし、製品を確認することは皆無に近いわけですから、それらのことを検出することは困難です。
 システムの適切さを維持し、製品の品質を確保、向上する責任は組織にありますので、認証機関の審査結果あてにせず、参考に留め、組織内での品質確保のシステムが機能するように努力することが大切です。


2.被監査側への内部監査教育
 その点で組織内の監査員が、組織のシステムを内部監査することには大いに意義があります。この内部監査を有効に活用しない手はありませんが、企業によっては内部監査への取組みには大いに差があります。JISQ9100の内部監査を重要と思っておらず、要求があるから形だけ実施しているという企業もあります。しかし、これをお話ししたとしても何の役に立ちませんので、よい例を紹介することにしましょう。

 品質マネジメントシステム(QMS)を改善し、最終的には品質改善に結びつけたいわけですから「被監査側」のQMSのレベルを高めることに注力している企業があります。それには、課長、係長、主任等の管理職にまず内部監査員を経験してもらう、あるいは監査員にならなくとも、内部監査員養成セミナーを受講して、それを自分の業務プロセスに活かす。また、業務プロセスの適合性を自己評価して、改善に努めるというものです。


3.内部監査員養成教育のシステム化
 毎年、人事異動に伴う管理職への昇格者、中途採用者への内部監査員養成セミナーへの参加を促し、監査の経験者にはリーダー実務訓練を行い、レベルアップを図っています。内部監査員養成のシステム化です。このような教育は、製品品質向上といった面への即効薬はありませんが、人材育成と組織のシステム指向へ考え方を育み、将来の発展への布石になっていると思います。

文責:門間 清秀


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連載コラム 第11回 内部監査を考える:企業風土と内部監査 
                               ―経営者の責任と監査員―



1.企業風土と経営者
 企業風土は,企業創設時の経営者が経営に取り組んできた姿勢と密接に関係しています。その姿勢を後々文書化したのが「社是」,「経営理念」といったものです。もっとも「社是」,「経営理念」等を制定していない企業も多いわけですし,「社是」,「経営理念」等と全く異なる経営をしている企業もいます。中小企業においては特に,経営者の意向が強く経営に反映されます。大企業においては,経営者はある任期で交替する仕組みをもっているのが一般的ですが,中小企業,その中でも同族会社となると経営者が代わることは何十年に1度といったことです。その間,経営者の意向が企業風土となって行くようです。このような中小企業は,小回りがきいて,決断が早くスピーディな経営ができる反面,組織として責任分担,文書化した業務の推進などシステム化された経営がなされていない場合が数多く見受けられます。

 そこで,ISO9001, JISQ9100の規格は,品質を切り口として顧客,品質重視のマネジメントシステムを構築し,運営し,企業風土を刷新して行くには適切な経営ツールなのです。


2.内部監査と経営者
 内部監査の実施は,経営者の依頼というより経営者に代わって実施するというのが規格の意図です。しかしながら,中小企業においては,現実にはそうは行きません。ここに企業風土が関係してきます。規格の意図からすれば,組織の弱点(顧客,JIS Q 9100, ISO 9001の要求事項に適合しない事項)を内部監査で指摘して,改善するのが目的です。

 経営者は,この目的に沿って監査員が多くの問題,課題を指摘してくれることを願って欲しいものです。現実に,そのように行動している経営者もおられます。社内の弱点,顧客,JISQ9100の要求事項に合致していないプロセスのシステム(仕組み)を抽出し,それを改善できる機会を得ることです。

 一方,監査員に指名された内部監査員にしてみれば,監査での事実を事実として記述できない監査員も沢山おります。経営者に対する下克上(反逆)と考えるのでしょうか。密告と考えるのでしょうか。このような状況に陥られないようにするにはどうすればよいのでしょうか。


3.経営者,管理責任者と監査員の役割
 少なくともJIS Q 9100, ISO 9001認証取得をしている企業の経営者は,内部監査をQMS改善の機会と捉えて,監査員が指摘事項をすることを奨励することです。また,社員が社業に忙しいのであれば,外部のコンサルタントを監査員として招聘し,内部監査を行うことです。これらができなければ,内部監査及び認証機関の監査に対して,“指摘をゼロに押さえよ”などと指示しないことです。

 管理責任者は,QMS構築,維持・管理について責任をもっているわけですから,適材適所の社員を監査員に任命することです。まずは,課長クラスを監査員に指名して監査に当たらせることです。もし,これができなければ,課長以下の社員に監査員を指名しても,適切な指摘を期待することはできません。また,経営者にQMSでの内部監査の意図をしっかり説明して,経営者を誘導することです。

 監査員として指名された管理者,社員は,不適合を見つけるというよりも会社をよりよい方向に導くのを手助けするものと考えて,監査することです。

 経営者,管理責任者そして監査員が,それぞれの立場で内部監査は,改善ヒントを得る機会と理解して,前進して欲しいものです。

文責:門間 清秀


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連載コラム 第12回 内部監査を考える:監査員の力量 
                            ―得意分野と監査の積み重ね―



1.監査が的確に実行できるか
 監査がその目的に照らして的確に遂行されたか否かは、監査員の力量に依存するところが大きい。しかし、現実には監査員に指名された人にとって“内部監査を実施するのが初めてである”、“監査を受けたことさえない”という人もいます。そのような監査員に“上手くやって来い”という方が無理というものです。今回は、事例とその対応について述べてみます。


2.監査の失敗事例
 大企業の例ですが、電子機器設計課主任が製造プロセス(熱処理)の監査を、他方、機械製造課係長が設計プロセスの監査をするように指名されたのです。二人とも初めての監査で、事前に品質マニュアル、細部規定を熟読し、チェックリストを作成して監査に臨みました。

 いざ現場での監査に入り、記録を確認しながら質問をはじめたのですが、それらは「専門用語」または表層的な質問のオンパレードでした。品質マニュアル、細部規定の内容、用語と現場で使用している用語、帳票等が全く異なっていたからです。二人の監査所見は、指摘、改善要望ともにゼロという結果でした。

 このような監査結果となった原因は、表面的には「監査員の力量」かも知れません。しかし、そうではなく監査事務局が対象プロセスを、全く経験がない、あるいは関係したことのないプロセスを指定したことなのです。監査員は、もうこのような監査はやりたくないという心境を吐露しました。

3.監査対象プロセスの割り当て
 このような状況に陥られないようにするにはどうすればよいのでしょうか。監査対象プロセスの割り当てを“監査員が得意とするプロセスとする”ことです。大企業にあっては、設計者には設計プロセスを、製造スタッフには製造プロセスを指定することです。

ただし、自分の所属する部門またはグループではないことは言うまでもありません。まずは、監査経験が全くない監査員には、このように割り当てに配慮することです。

 得意分野のプロセスを数度経験した後に、徐々に他のプロセスを割り当てることで解決することができますし、または、得意分野のプロセスを監査対象にし続けても何ら問題はなく、むしろよい結果が出ると思います。“餅屋は、餅屋”でやるのがよいと思います。誤解をしないでほしいのですが、割り当てたプロセスが監査員の活動プロセスと同じであっても、同じ部門ではないのです。


4.不得意分野を割り当てられた場合の対応
 先日、内部監査セミナー最後に“質問があれば、残っていただき何でも質問してください”と言いました。ある受講生が深刻なまなざしで“内部監査セミナー受講後、会社に戻って、全く経験のないプロセス、部門の監査をやるように命じられているのです。どのようにすればよいのでしょうか”というものでした。

 被監査プロセスの品質マニュアル、細部規定を熟読することは当然としても、初めての監査では失敗に陥ることは目に見えています。情況を再確認した後に次のようなアドバイスをしました。

 “@まずチェックリストを早く作成し、事前(1週間以上前)に被監査側のプロセスオーナーに提示し、回答を求める。A回答内容を精査・スタディし、監査に臨む。このようにすれば、先方が監査をどのような姿勢で、対応しようとしているか、また聞き慣れない専門用語も事前に知ることができるので、十分に監査ができますよ”とアドバイスしました。大分に安心した顔つきになり、帰路につかれました。 この結果は、どのようになるのか、後々に確認してみようと思っております。 

文責:門間 清秀


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連載コラム 第13回 内部監査を考える:是正処置への心つもり 



 監査が、その目的に照らして的確に遂行されたか否かは、監査員の力量に依存するところが大きいことを第12回コラムで述べました。今回は、内部監査で不適合事項、改善要請事項を被監査側に指摘する際の監査員の心つもりの話です。

 原則論からいえば、監査員はQMSの運用状況の実態(現場、記録など)を監査基準(品質マニュアル、細部規定、顧客要求事項、法令等)に照らして、適合していない場合は不適合であること、不適合になる可能性がある場合は改善要請であることを被監査側に伝え、合意が得られれば不適合報告書を発行すればよいのです。(プロセスの適合性監査)  また、有効性の監査においては、プロセスの適合性を満たしたうえで、設定又は計画したプロセスの管理指標、管理値に対して実施状況を確認して、大幅な差異があれば改善要請を発行することを伝えることになります。(プロセスの有効性) 

1.指摘事項に対する是正処置(案)のアイデアを
 内部監査の最終目的は、QMSの改善であって不適合報告書を発行することではありません。したがって、監査員が監査所見として不適合、改善要請であると判断した場合は、この指摘(不適合、改善要請)に対して、どのような是正処置、改善のアイデア(案)を提案できるかを考えておくことです。もちろん被監査側が提示する(案)を一緒に討議することが最優先ですが、被監査側にアイデアがなければ、監査側が是正処置、改善の(案)を出し、討議することです。
 これによって、不適合、改善要請とした意図を双方で確認し合えることとなりますし、また、是正処置計画、実行の促進がはかられることなります。


2.是正処置(案)のアイデアの絞り出し
 監査員に、不適合または改善要請に対する是正処置の案がない場合は、どうすればよいのでしょうか。 私の考え方ですが、是正処置(案)が提案できないような事項に対しては、不適合または改善要請をしないことです。内部監査の目的は、QMSを改善することであって、指摘することではないからです。(ただし、こうも簡単に指摘をやめたとは言わないでください。)
 このような監査状況に陥らないためには、@監査員に得意分野の監査対象プロセスを割り当てる、A監査員の力量をあげるといった工夫が必要です。(参照:第12回 内部監査を考える)

 

(1)監査員に得意分野の監査対象プロセスを割り当てる
 これはお分かりですね。監査員は、監査対象プロセスを熟知しているので、要求事項の本質(意図)を理解し、不適合に対してどのように対応すればよいかの是正処置(案)を提案できます。
もちろん、不適合の原因を討議・把握した上での提案です。


(2)監査員の力量アップを図る
 監査員の力量アップを図ると簡単に“言うのは易く、行うは難し”です。少し、指摘事項の内容について分類して考えてみましょう。
 不適合には、@計画面の不適合とA運用面の不適合があります。

  a)計画面の不適合に対する是正処置(案)
   ・計画面の不適合とは、監査基準(顧客要求事項、法規制上の要求事項、JISQ9100要求事項)と
    品質マニュアルが矛盾している。品質マニュアルと細部規定、要領書、手順書との整合が
    とれていない。図面と作業手順書が不整合である。等々です。
   ・まずは、矛盾していることや不整合を正すことですが、なぜ矛盾や不整合が発生したのかの
    原因を被監査側と討議して、是正処置に結び付けることが必要です。そうしなければ、矛盾、
    不整合を修正しても運用面の不適合を起こします。

 

  b)運用面の不適合に対する是正処置(案)
   ・運用面の不適合とは、監査基準どおりに実施していないことです。決めたこと、決められた
    ことを守っていないことです。
     この原因には、@知らなかったから起こる不適合
              Aうっかりして起こる不適合
              B知っていたがやらなかった不適合があります。

・これについては、なぜなぜ分析の手法もありますが、次回のコラムで述べることにします。

文責:門間 清秀


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連載コラム 第14回 内部監査を考える:不正予防
                           ―運用面の不適合の原因と是正処置― 



 前回では、不適合にはa)計画面の不適合とb)運用面の不適合があることを述べました。今回はその続きであるa)運用面の不適合への是正処置について述べます。特に不適合の原因がB知っていたがその指示とおりやらなかったは、放置しておくと不正の基になります。是正処置対策に向けた手法は、なぜなぜ分析と共通しております。 以下3行までは前回の繰り返しですが、ご容赦下さい。

 運用面の不適合とは、監査基準どおりに実施していないことです。決めたこと、決められたことを守っていないことです。この原因には、@知らなかったから起こる不適合、Aうっかりして起こる不適合、B知っていたがやらなかった不適合があります。


1.知らなかったから起こる不適合への是正処置
これは、定められ、あるいは定めた事項(顧客要求、法規制上の要求事項、品質マニュアル、規定、手順書)を知らなかったということですから、確実に周知することです。“周知する”、“教育する”、“注意する”といった是正処置案は、“その場限りの言い訳”のようです。どのように“周知する”、“教育する”が重要です。

対象者が新人、中途採用者、人事異動者の場合には、最初の仕事に従事する段階で、業務に関係する事項の決まりごとを“周知する”、“教育する”ことです。そして、それらが本人にとって“理解したか”を“確認する”ことです。アメリカなどの欧米では、イントラネットで設問して解答が合格点をパスするまで実施しています。日本でも法規制等のコンプライアンスにかかわる事項については、実施され出しました。
 対象者が、上記以外の従来から同じ業務、同じ職場にいる人たちに対しては、“重要な決まり事”を定期的に“知っているか否か”、あるいは“改訂ポイント”を周知・確認することです。

 これらやり方がまさしく“システム化された是正処置”です。結構労力が必要です。


2.うっかりして起こる不適合への是正処置
 製品の不適合に関する事項でなく発生頻度がまれであれば、アクションをとらなくてもよいと思います。むしろ不適合として指摘しないことです。重大な事項については、当然原因を調査して対策をとる必要があります。繰り返し“うっかり”が多ければ、職種を替える必要があります。


3.知っていたがやらなかった不適合への是正処置
 本件が非常に難しい対策ですが、見逃してはいけない不適合なのです。理由は、知らず知らずのうちに常態化して、法規制上の要求、規定とおりに実施していないことを“当たり前”のことと思って実施するようになるからです。

 例を製造現場についてお話ししてみましょう。
 現場に出かけ、「作業指示書兼記録票」を確認したら、@工程が逆転して実施されていた、A検査工程が実施されず(工程飛ばし)に次工程に流されていた。B作業手順書とおりの手順で実施されていなかった。C検査員が認されていない検査員が実施し、検印を他の人のスタンプを使用した等々です。@Aについては、工程管理のコンピューターシステムを導入すればシステム的に防ぐことができます。Bついては結構困難です。Cについては個人認証システム(パスワード等)を活用すればできますが、@ACとも相当の費用が掛かります。費用掛けずに決められたとおりに実施するには、なぜそうやったのかを確認し、対策をとるしかないのです。

 時間がなかったから、改善を提案しても採用してくれなかったから等々あると思いますが、それらのことを放置しておくと社内不満から、決められたことを守らない風土になってしまいます。

 認証機関の審査で、このような点まで入り込んで審査し、不適合を抽出して根本原因まで遡っている事例を見たことはありません。それは認証機関が能力がないといっているのではなく、短時間でのQMSを確認する時間はなく、認証機関の審査制度の限界なのです。

 内部監査は、認証機関の審査とは反対に、これらを“知っていたけどやらなかった”そしてそれらが“常態化していた”ということを検出できる監査なのです。それで、指摘しないでいると別な角度の内部告発による“不正の暴露”が出てくるのです。
 これらの事象は、製造現場だけの話ではなく、設計、購買業務等の関係するすべての業務に通じるところなのです。

文責:門間 清秀

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