【連載コラム】 不適合と是正処置となぜなぜ分析


第1回 不適合と是正処置となぜなぜ分析



1.是正処置はすべての不適合にとる必要はあるか?
 セミナーにおいての説明で、“不適合1件1件について是正処置を必要とはしないし現実的ではない(すべて是正処置をとりたいという気概はわかりますが)”と説明すると、時々反論があります。無理もないことです。
でも品質管理、信頼性管理では完全というのはないという前提で、重点指向をして目標を達成するという考え方であることを説明しています。

納得されているか否かを別として、品質管理のQC7つ道具の一つ、パレート図は、重点対策を行う現象又は原因をピックアップする手法です。是正処置をやらなくてよいといっているのではありません。

不適合1件1件について、是正処置をとることが困難又は効率的でないのであれば、不適合を集計し、束ねた管理をすればよいのです。それがパレート図です。
話は違いますが、抜取検査では、最初から不適合をある程度許容している検査手法です。完全さを求めておりません。

 信頼性管理の手法であるFMEAは、抽出したすべてのリスクを除去することは困難であり、効率的でないので“受容できるリスク”まで軽減する手法です。“故障は必ず起こり得る。起こり得る故障をどう少なくするか。 故障が起こっても目的を達成するためにはどうするか。システムが致命的なダメージを避けるにはどうすればよいか”という手法です。その是正処置であるリスクの軽減策として、故障率の低い部品を採用する、冗長設計を行う、ディグレーティングの運用等があるのです。

2.なぜなぜ分析
最近、“なぜなぜ分析”で不適合製品、クレームを低減したいという企業様へ出前セミナーを行ったのでなぜなぜ分析について、解説したいと思います。

(1)原因調査・・・通常の原因分析
 @技術的調査を通して、真の原因を特定して対策を行う。
 Aこの調査では、固有技術面からの原因追究である。
 B調査においては、専門技術面、3現、5ゲン(現場、現物、現実、原理、原則)、特性要因図、
  FTA(Fault Tree Analysis 故障の木解析)、4M(Man, Machine, Material, Method)管理等の
  手法を駆使して、原因を特定して対策を行う。

 真の原因の追究は、固有技術による原因追究と対策である。



(2)なぜなぜ分析・・・根本原因の追究
 @原因調査は、固有技術的な原因調査を追究することであり、なぜなぜ分析は、
   それを防げなかった管理システム(経営)の欠陥、すなわち根本原因を追究する手法である。

 根本原因の追究は、管理技術面からの原因追究と対策である。


 A「管理上のどこが不適切なのか?」を追究する分析であり、それによって、よりよき管理を
   実現するためである。したがって、「ミスをした」、「考え事をしていた」、「忙しかったから」等は
   「なぜ?」に対する回答ではない。

  また、固有技術的な原因そのものは、「なぜなぜ分析」によって明らかにするものではなく、
  その専門分野の方法によって調査することです。


 B「なぜなぜ分析」とは、不適合、クレームの原因が判明したときに、その固有技術的な原因を
   除去して、不適合、クレームを解消させるだけで終わらせず、原因となった管理システム上の
   原因を追究し、根本原因を究明する手法である。


(3)留意事項
 すべてのクレーム、不適合に「なぜなぜ分析」をする必要はないのです。一方、重大クレーム、重大不適合に対しては必要です。しかし、これらの根本原因の対策には、経営に関する課題(風土の改革、人材育成、システムの強化等)が付きまといます。経営者を納得させ、改革をする覚悟で取り組む必要があります。

文責:門間 清秀


連載コラム 第2回 なぜなぜ分析・・・事例


1.建設機械の油圧機器クレームの事例
 なぜなぜ分析について事例で説明するとわかりやすいと思いますので、私の40年前の“体験”の事例で説明します。建設機械の油圧機器のクレームの根本原因調査と対策についてです。

 1973年当時は、中東戦争による石油高騰、いわゆる第1次オイルショックによる物価の高騰とともに高度経済成長の終えんでもありました。不景気になり、ユーザーが経済成長期には3年で買い替えしていた建設機械を5年、6年間使用することとなったのです。そのことにより、それまでの“潜在的クレーム”が一機に吹き出しました。品質クレームの増大による採算の悪化をきたしました。

 建設機械の油圧機器の採算改善・改革を本社主導のプロジェクトを立ち上げ、品質、コスト、そして競合他社等、戦略面から調査・検討することになりました。私は、航空宇宙の油圧機器品質保証担当であり、建設機械油圧機器の品質保証に携わっていませんでした。そのためにこのプロジェクトメンバーに命じられて、品質保証面からクレームの原因と対策を調査と提言するように命じられたのです。当時29歳でした。


2.事実(真因)の調査
(1)クレーム分析
 数百のクレームから重大クレーム(金額、件数ワースト7)をまとめてみると、驚いたことに油圧機器の本体であるケース、作動油を各機器に分配する役目のディストリビューターなどが破壊するというクレームがワーストの上位を占めていました。

(2)信頼性解析

 これを信頼性解析(ワイブル解析:使用時間の経過とともに故障件数の変化を解析)すると、さらに驚くことに短時間使用の部品でも摩耗故障による破壊であったのです。参考:50年前から建設機械にはアワーメーター(使用時間と故障の発生した時間がわかるように)が取り付けられており、信頼性解析ができたのです。

(3)真因の調査
 破壊した部品を技術的な面から調査すると、@強度不足、A顧客仕様に記載されていない想定外の衝撃力(ウォーター・ハンマー現象)が加わって破壊していたことがわかりました。技術的な真因は明確になりました。

 

3.なぜなぜ分析
 ここまでの調査は技術的な調査結果であり、この調査結果だけで是正処置を行なえば、@強度不足に対しては“強度を増す”、A顧客仕様に記載されていない想定外の衝撃力に対しては、“顧客仕様の変更を要請し、その上で衝撃に強い機器を設計する”ということになります。非常にまれに起こる軽度の故障で“偶発故障”で、油圧機器そして建設機械の機能に悪影響を及ぼさないようであれば、この対策で済ますこともあります。しかし、本クレームの“質”は、非常に重大なクレームであり、この調査で終わることはできません。根本原因を調査することにしました。

(1)ヒアリングによる調査
 調査は、油圧機器設計者、開発試験担当者に直接ヒアリングすることです。なぜ強度不足、衝撃力に堪えられない油圧機器を設計したのか、開発試験で検出できなかったのかということを調査することです。

 ヒアリング結果で判明したことは、@強度計算をせず容量の大小による相似則で形状等を設計、A耐久試験の途中で中止、B開発・試作品と量産品とで異なる材料(試作では鋼、量産では鋳鉄)使用、Cお客様の仕様に衝撃力についての要求がない、D市場での建設機械(油圧機器を含む)の使われ方を知らない、ウォーター・ハンマー現象はコンクリート壁を壊すときに発生していた(想定していなかった)、等々のことが判明しました。

 さらにその背景にあったのは、E設計・試験の時間がない、F建設機械の使用現場に出かけて使用状況を把握せずに設計・試験していたというものでした。E、Fは当然関連しています。 また、建設機械には、航空機油圧機器のような品質管理、信頼性管理は不要という風潮もあったのです。

(2)風土の問題

上記のヒアリングを総合し、根本原因を次の整理・結論付けました。

  • プロダクトアウトの体質・・・高度経済成長時期の物を作れば売れる体質
    (マーケットインではない)
  • 開発プロセスの未整備・・・・設計標準、試験標準の未整備
  • 建設機械油圧機器と航空機油圧機器の並立工場の品質管理の運用の困難さ(人的資源投入等)
  •   

これは、まさに経営(マネジメント)の問題だったのです。

4.経営(マネジメント)の対策
 経営の問題と判明しましたので、建設機械油圧機器事業トップへの説明・報告と経営対策・提言についても説明しました。

文責:門間 清秀