【連載コラム】 航空宇宙産業のクラスターについて


連載コラム 第1回 航空宇宙産業のクラスターについて

(2015年8月21日)


日本航空宇宙産業界では、○○クラスターとの名称で多く地域で、多くの組織が集まって活動しています。
その活動とは、企業間で受注、生産活動はもちろんのこと、大学、研究機関が技術開発を支援、銀行等が財政面から、公的機関(国はもちろん各自治体)は、国家プロジェクトと位置付けて規制緩和、財政面からの優遇措置を実施しています。

この最大の活動拠点が、「アジアNo.1航空宇宙産業クラスター特区」の中部地区です。

 しかしながら、私自身、クラスターの意味を把握していないまま、現在に至っているのも事実です。そこで、「クラスター」の意味について、インターネットにて調べたことを掲載します。ご存知の方は、パスしてください。

下記は、「m産業クラスターとは、意味・説明・定義:マネー用語辞典」より

 産業クラスターとは、米国の経営学者マイケル・E・ポーターが提示した概念で、「特定の分野における関連企業、専門性の高い供給業者、サービス提供者、関連業界に属する企業(大学や業界団体、自治体など)が地理的に集中し、競争しつつ同時に協力している状態」のこと。

 クラスターとはブドウの房のことで、ブドウのように企業・機関・自治体などが地理的に集積し、ネットワークをつないでイノベーション創出することを指す。

今までにない新しい組み合わせの企業・機関ネットワークをプロジェクトごとに構築することで、新産業を生み出し、日本の経済再生を図るためピラミッド型である従来の「垂直型産業組織」や、企業誘致に重点を置いた地域経済振興から「産業クラスター」へ各地域で組みかえられている。
経済産業省が促進し、文部科学省や金融庁、地方自治体などとも連携してすすめている。

米国での産業クラスターの例として、テキサス州オースティンの情報産業クラスターなどがあり、ここは石油産業がメインだった地域が、イノベーションを創出して情報産業の進んだ地域となった。

 中部地区以外でも、新潟、岡山、大阪、長野、秋田等々の各地域で活動しています。

 次回は、「クラスターと一貫生産との関係」について、考察してみたいと思います。

文責:門間 清秀

連載コラム 第2回 航空機産業のクラスターと一貫生産

(2015年8月28日)


 日本の各地域において、航空機に関する様々なプロジェクトがクラスターを形成して活動していることを第1回にてお話ししました。一方、「のこぎり生産」から「一貫生産」という名の生産活動への転換も進んでいることは事実です。

 この「のこぎり生産」とは、大企業(プライム)が多くのtier1、tier2サプライヤ(協力会社)を抱え、プライムが素材を調達し、それをある協力会社に支給して機械加工を行わせ、納入された後にプライムが検査し、その後に放電加工、あるいは溶接作業のために他の協力会社に運搬して、納入された後にプライムがまた検査して部品を完成していく生産方式です。
生産コストがプライムに比べて安い協力会社を活用する商取引(外注加工と言われてきました)の一環で、生産活動が行われてきました。

 しかし、この生産方式は、プライムにとって多くの協力会社を管理するため、間接費負担の増大をきたしました。また、787,737,777X,防衛省プロジェクト等の業務多忙につき、多くの協力会社を指導することができなくなってきたという事情もあります。

 プライムはこの解決策として、主要な外注加工業者(tier1協力会社)に素材調達から機械加工はもちろん熱処理、表面処理等の特殊工程を任せて、完成部品の状態で納入をする生産体制に転換したのです。一方、プライムは品質確保の観点から、JISQ9100及びNadcap認証取得をtier1協力会社はもちろん、tier2協力会社に対して強く求めています。

 上記の一貫生産活動だけを見れば、プライムがSCM(サプライヤ・チェーン・マネジメント)の組み換えだけですので、クラスター活動とは異なると思います。もちろん、クラスターの正確な定義に合わなくとも、「特定の分野における関連企業、専門性の高い供給者、サービス提供者、関連業界に属する企業(大学や業界団体、自治体など)が地理的に集中し、競合しつつ同時に協力している状態」の定義に50%以上であれば、特に云々する必要性はないでしょう。

 ネットワークをつないでイノベーション創出、新産業を生み出す活動を行っているのは、新潟県を中心とする「NIIGATA SKY PROJECT」でしょうか。現在まで、航空機産業に全く依存していない関係者、企業が「無人飛行機システムの開発」に向けて、活動しているのですから。もちろん「NIIGATA SKY PROJECT」の他にも活動している地域はあると思います。

 次回は、経済産業省の「産業クラスター政策」の観点から、航空宇宙産業クラスターの中の製造業の現在を見てみたいと思います。

文責:門間 清秀

連載コラム 第3回 産業クラスターの政策について

(2015年9月4日)


日本での産業クラスターの経過と現在・未来を把握しておくために産業クラスターへの政策を記述してみました。なお、これはすべて「経済産業省のHP」から転載したものです。
http://www.meti.go.jp/policy/local_economy/tiikiinnovation/industrial_cluster.html

経済産業省の産業クラスター政策は、「地域の中堅中小企業・ベンチャー企業が大学、研究機関等のシーズを活用して、産業クラスター(新事業が次々と生み出されるような事業環境を整備することにより、競争優位を持つ産業が核となって広域的な産業集積が進む状態)を形成し、国の競争力向上をはかるもの」とされています。そして政策の目標レンジを3段階で進めてきました。

 第1期(2001〜5年)産業クラスターの立ち上げ期
 クラスターの実態と政策ニーズを踏まえ、国が中心となって進める産業クラスター計画プロジェクトとして20程度を立ち上げ、自治体が独自に展開するクラスターと連携しつつ、産業クラスターの基礎となる「顔の見えるネットワーク」を形成する。

 第2期(2006〜10年)産業クラスターの成長期
 引き続きネットワークの形成を進めるとともに、具体的な事業を展開していく。また、同時に企業の経営革新、ベンチャ―の創出を推進する。なお、必要に応じて、プロジェクトの見直し、新たなプロジェクトの立ち上げを重点に行う。

 第3期(2011〜20年)産業クラスターの自立的発展期
 ネットワークの形成、具体的な事業展開を更に推進していくとともに、産業クラスター活動の財政面での自立化を図っていき、産業クラスターの自律的な発展を目指す。 以下省略します。


現段階では、「地域との共創による産業クラスター政策の新展開」として、「クラスター政策の2分類化」をはかっていく政策です。 

具体的には、

(1)地域主導型クラスター>
 ・地域独自で取り組むクラスターの他、広域で取り組むものについては、新・産業集積活性化法
 (企業立地促進法)などの施策で国もサポートしていくケースも。

(2)先導的クラスター
 ・先導的な分野で、わが国の国際競争力確保のため、全国的な視野から形成を推進していく必要がある
  クラスターは国が主導

「アジアNo.1航空宇宙クラスター形成特区」は、先導的クラスターに区分されると思います。

文責:門間 清秀

連載コラム 第4回 産業クラスターとして品質マネジメントシステムを構築・認証取得できるのか

(2015年9月25日)


産業クラスターとして品質マネジメントシステム(QMS)を構築し、ISO認証取得できるかと議論がありました。そこでJIS Q 9000の用語の定義を紐解いて、検討してみました。 結論から言えば、QMSの認証取得は可能であるということです。

 まず「品質マネジメントシステム」の定義を解読して、検討することにしました。

品質マネジメントシステム

品質に関して、方針、目標及びその目標を達成するためのプロセスを確立するために、
相互に関連する又は相互に作用する、組織の一連の要素。


 ここで、キーとなる用語として「組織」が出てきます。「組織」は、下記のように定義されています。

組織

自らの目標を達成するため、責任、権限及び相互関係を伴う独自の機能を持つ、個人又は人々の集まり。

  注記1: 組織という概念には、法人か否か、公的か私的かを問わず自営業者、法人、事務所、
         企業、当局、共同経営会社、協会、非営利団体若しくは機関、又はこれらの一部若しくは
         組み合わせが含まれる。ただし、これらに限定されるものではない。

 上記のことから、クラスターに属する個人又は人々の集まりであって、その個人又は人々の集まりに、責任と権限が明確にされ、相互関係と独自の機能を持ち、それらがQMS文書として、明文化し、運営・機能すれば、QMSのISO認証は可能ということになります。


 本件、認証を要望しているクラスターから認証機関に見解を求めた結果は、「認証は可能」との回答を得ました。

 さて、このように「クラスター」として、QMS認証取得に何かメリットがあるのだろうかと思いますね。それは、またの機会に譲ります。

文責:門間 清秀

連載コラム 第5回 ISO9001改正と東京エアロスペースシンポジウム2015:産業クラスターの側面から

(2015年11月6日)


 この三つのタイトルがどのような関連があるのだろうかといぶかる方が多いと思います。
ISO 9001:2015を読まれた方は、最後にこれが何を意味しているかがわかっていただけます。

 前置きはこれぐらいにして、「東京エアロスペースシンポジウム2015」は10月14〜16日に盛況に開催されました。
目についたのは、産業クラスターの展示が非常に多かったことです。各県、地方自治体のクラスターの多さです。

東は、東北航空宇宙研究会に始まり、群馬県、AMATERAS、静岡県、神戸航空機クラスター研究会、ひょうご航空宇宙ビジネス・プロジェクト、西はSUSANOO、やまぐち産業振興財団等といった具合です。

 これは、国際航空宇宙展に参加する国際、国内大手航空宇宙メーカーが、大々的な展示をしていないことが、クラスターの展示を引きただせたのでしょうか。又は「地方創生*1」から来ているのでしょうか。そうではなく国の政策による産業クラスター第3期*2(2011年〜20年)「産業クラスターの自律的発展期」にさしかかってきたと理解するのがよいかと思います。

 さて、ISO9001改正との関係です。2015版での改正のポイントは、「リスクに基づく考え方」です。
それには、規格要求事項である「4.1組織及びその状況の理解」と「4.2利害関係者のニーズ及び期待の理解」を十分に理解することです。

 4.1組織及びその状況の理解では、具体的には、
“組織は、組織の目的及び戦略的な方向性に関連し、かつ、そのQMSの意図した結果を達成する組織の能力に影響を与える、外部及び内部の課題を明確にしなければならない。”と要求し、注記2“外部の状況を理解は、国際、国内、地方又は地域を問わず、法令、技術、競争、市場、文化、社会及び経済の環境から生じる課題を検討することよって容易になる。”と解説しています。

 4.2利害関係者のニーズ及び期待の理解では、
“・・・組織は、これらの利害関係者及びその関連する要求事項に関する情報を監視し、レビューしなければならない。”と要求しています。

 しかし、具体的に航空宇宙関係の企業は、ISO 9001:2015、JIS Q 9100:2016の要求事項である“外部の状況を理解し、課題を検討し、要求事項に関する情報を監視し、レビューする”に対して、何をすればよいのかわかりません。

 その解答例として“産業クラスター”という大きなヒントがあります。地域産業クラスターに参加すれば、海外・国内の展示会、研究会への参加を通した技術、競争、市場情報の獲得、ビジネスマッチング商談の機会などの特典があります。

 航空宇宙産業クラスターに参加する(参加している)こと自体が、ISO 9001、JIS Q 9100箇条4.1、4.2の要求事項である「組織及びその状況の理解」、「利害関係者のニーズ及び期待の理解」そして「利害関係者等の要求事項に関する情報を監視、レビュー」していることなのです。


*1地方創生:本来の目的は「地域振興・活性化」であり、農業、観光、科学技術イノベーション等
          地域社会の問題解決、地域における就業機会の創出です。

*2産業クラスター第3期:【連載コラム】航空宇宙産業のクラスター
                 第3回「産業クラスターの政策について」参照

文責:門間 清秀