1980年代はコンピューターの発展期で、航空機電子装備品はコンピューター化され、防衛面から最先端技術を駆使した電子機器となっていました。米国における国防総省航空機調達において、ヘコプターの主契約者は機体会社ではなく、コンピューターメーカーとなるケースも出てきました。
これらの外部環境を踏まえて、当時の三菱重工の取組みも変化をしてきました。航空機搭載電子機器の制御ソフトウェアを自前で本格的に開発を開始したのです。しかし、品質保証面での課題も出てきました。 電子技術部門が、ソフトウェアの設計、製造(複製)及び試験(Validation)のすべてを担当することによる課題が出てきました。

ハードウェアでは、開発・設計は設計部門、製造は製造部門、検査・試験は品質保証部門が担当する三権分立の体制を敷いていたのですが、ソフトウェアについては設計部門がすべてを担当していたのです(規模が小さい段階では、このやり方が効率的であることは明らかです)。

しかし、進捗管理を含めたすべてを管理することは、品質と納期のハザマで、不適合(バグ)が顧客に流出するリスクが高くなるからです(実際流出が多くなった)。

当時、係長であった私は、電子技術部門のソフトウェア設計課長とお話しし、「検査・試験を近未来には、品質保証部門が担当したい」と提案しました。ソフトウェア設計課長は「是非やってほしい」と賛同してくれました。

一方、品質保証部門の課長、部長に説明し、理解を得て、最終的には事業所組織の業務分掌を変えるまでには3,4年の歳月を要しました。設計部と品質保証部間の合意を得て、品質保証部若手技術者数名をソフトウェア設計課に数年派遣し、設計業務を習得することから始めました。

当初は、技術品質保証課員としてソフトウェアプログラムの検査・試験によるバグの検出・除去を担当し、バグ成長曲線等を駆使してソフトウェアを保証し、出荷しておりました。しかし、本質的なソフトウェアの品質保証活動ではなかったことは明らかです(検査・試験に過ぎない)。

そこで、ウォークスルー、プログラム仕様とプログラム設計との比較評価等のソフトウェア開発上流工程を監視する役割に、責任を分担するように転換していきました。 これらの活動と並行して、事業所としての「ソフトウェア開発・保証(所規定)」も関係部門の2年にわたる検討結果整備されました。その後の活動については省略させていただきます。

航空宇宙産業に携わる品質保証技術者の皆さんへのメッセージとしては、航空宇宙産業の最先端技術(The State of the Arts)に従事するには、設計、製造技術の高度化、変化とともに、品質保証(管理)技術を磨いて、顧客満足を獲得していただきたいのです。

このソフトウェア品質保証に携わることになったのは、1975年に品質保証部の戦略的調査及び初期品質計画を行う品質管理課に異動したからです。

そこで出会ったのが、MIL S 52779 Software Quality Program Requirements(後に、DOD STD 2168 Defense System Software Quality Program)でした。

20代でNCプログラムに関心があったこともあり、MIL S 52779を熟読し、品質保証体系図(最近は、品質マネジメント体系図)を作成してみました。驚いたことには、ソフトウェア品質保証のやり方は基本的には、ハードの品質保証となんら変わらないということでした。1980年代初頭の頃の話です。