防衛庁技術研究本部が将来の戦闘機開発に必要な要素の研究を実施するためにCCV研究機(Control Configured Vehicle)運動能力向上機(研究機)*1の開発時に、設計部門、製造部門と実施したリスク管理についての品質保証部門の関与の事例です。
(注1:CCVについては、Wikipediaに掲載されている範疇で記載しています。1978年に開発し、1983年に初飛行)

CCV研究機は、将来の次期戦闘機FSX(F-2)を想定した機体ですから、フライ・バイ・ワイヤー(FBY)、動翼のCFRP,それらのコンピューター制御等々の新技術(設計技術、製造技術等)を研究・試作・試験するものです。
したがって、各部門(研究、設計、製造、品質管理)が研究機を設計・製造するのに必要な技術リスクを抽出し、リスクを軽減し、初飛行に備えようとすすめました。1980年頃のことです。

リスク管理を推進するためには、誰が、取りまとめ、リスク抽出、リスク基準の設定、リスクの受容等定めておく必要があります。
①責任者は、設計部門のプロジェクトマネージャー(PM)、
②事務局は、品質管理部門、
③リスク抽出とリスク基準の設定は、関係者部門すべてで(主として設計部門と製造部門)協議し、PM承認をえて定めて推進しました。

PMの日程に合わせてリスク管理会議を開き、進捗状況、課題と対策、リスクポイントの確認、最終的には、リスクの受容段階に入り、初飛行へのGOサインとなったのです。
ここで、品質管理部門の事務局の役目は、PMとの日程調整、会議招集、議事録、リスクの進捗等、技術とかけ離れた業務と思えるかもしれません。しかし、これで開発が順調に進めば、品質システムが適切に機能していることになります。

もちろん、これらのリスク管理のやり方は、所標準「リスク管理」規定として、経営者である所長の承認を得て制定され、以降のプロジェクトで活用できることになりました。品質保証部門の役割は、全体、特に上流工程での品質確保に力を注ぐこと、それは黒子の役割であると思っている次第です。
(第3回のコラム「形態管理」の事務局的役割は同じですね) >>>

JIS Q 9100:2009版に「リスクマネジメント」の要求事項が追加されました。その要求事項の内容は、
a)リスクマネジメントのための責任の割当て、
 b)リスク基準の定義、
c)製品実現を通してリスクの特定、アセスメント及びコミュニケーション、
d)定義したリスク受容基準を超えるリスクを軽減する処置特定、実施及び管理、
e)軽減処理した後の残留リスクの受容であり、社内で制定した所標準「リスク管理」と内容はほぼ一致しています。

弊社が発刊している「JISQ9100:2016航空・宇宙・防衛品質マネジメントシステムの解説」書籍の「運用リスクマネジメント」要求事項の解説は、その時の遺産です。