JIS Q 9100:2016規格8.1.1「運用リスクマネジメント」の要求で、b)リスクアセスメント基準(例えば、発生確率、影響の程度、リスクの受容)が示されています。しかし、リスク(心配事)が発生したときの「影響度の程度」は、わかったとしても「発生確率」は、なかなかわかりません。どのように基準を設定すればよいのでしょう。

【参考:発生確率の推定は、過去の実績(事実・事例)をベースにして、近未来を推定しています。例えば、地震の発生確率と発生したときの影響度の推定はその例です。あるいは、自動車で発生する故障モードの確率とその影響度は、大量生産、市場での事例から推測できます。】

では、機械加工メーカーでのリスクアセスメント評価は、どのようにすればよいのでしょうか。
発生確率にこだわらないことです。例えば、機械加工メーカーについて考えてみましょう。
実際の例ではありません。非常に極端な例です。

現在、材料がAl、Steelベースで切削加工を主生業としている場合、Inco718等の難削材加工には、リスクがあります。またCFRPの加工となれば、さらに大きなリスクとなります。 また、加工公差が±0.1以上の加工を主生業としメーカーにとって、±0.01の加工については、リスクがあり、さらに±0.001の加工では、さらに大きなリスクとなります。お解りですね。
レベル評価(難易度)すれば、Al、Steel=レベル1、Inco718=レベル2、CFRP=レベル3となります。これが「発生頻度」に代わる「加工法」のリスクアセスメント評価基準です。

それでは、「影響度の程度」については、どのように評価するのでしょう。
Al、Steelベースで切削加工のみ対象としていたメーカーが、Inco718等、又はCFRPの加工を請負いし、多くの不適合品を発生させたとき、それを解決するまでの「日程への影響度」を考えることです。Inco718では、解決まで1~3ケ月間を要し、CFRPでは半年以上かかるとしましょう。
レベル評価をすれば、Ai, Steel=レベル1、Inco718=レベル2、CFRP=レベル3となります。同様なことは、加工公差についてもいえることです。

それでは、「リスクの受容」について考えてみましょう。
「加工法」レベル×「日程への影響度」レベル=1~9になります。1,2,3,4,6,9のいずれかです。 一般には、レベル1,2は、自動的に「受容リスク」です。特に事前のアクションを取らないことです。レベル6,9については、必ずアクションを取るか、受注やチャレンジを取りやめることであり、レベル3,4はアクションを取るか、「受容リスク」とするか状況によって決めます。

上記は極端な例ですが、リスクアセスメント基準の設定の考え方である、設計FMEA, 工程FMEAの手法です。上記の例では、「日程への影響度」など検討しなくとも評価・判断することができると思います。

規格の箇条8.2.2d)では、“運用リスク(例えば、新技術、製造能力及び生産能力、短納期)が特定されている”との要求があり、箇条8.4.1では、“組織は、外部提供者の選定及び使用と同様に、プロセス、製品及びサービスの外部提供者に関連するリスクを特定し、マネジメントしなければならい”と要求しています。では、これらの要求に対してどうするかです。

  1. 顧客との引き合いの段階で、リスクの有無を社内関係者間で協議することです。
    箇条8.1「運用の計画及び管理」の中で、g)項“運用の計画及び管理に対して影響を受ける組織の
    代表者の参加”を要求しています。
  2. 同じく顧客との引き合いの段階で、リスクがあると判断し、遂行が困難と判断する場合、顧客と協議する
    ことです。箇条8.2.3「製品及びサービスに関する要求事項のレビュー」で、・・・ “このレビューは、組織の
    該当する機能と調整しなければならない。このレビューにおいて、顧客要求事項が満たされない又は部分的に
    しか満たされないということが判明した場合、組織は、相互に受入れ可能な要求事項を顧客と交渉しなければ
    ならない”とうたっております。リスクへの取組みの実際的なやり方で、関連する人々と検討することです。。

今回のリスクアセスメント基準に係る要求事項は、箇条8.1.1「運用リスクマネジメント」への航空・宇宙・防衛産業に対する特有な要求事項です。
「リスクマネジメント=予防活動」として活動されることを望みます。