航空機産業は軍用機の開発・生産から発展してきました。民間旅客機が本格的にジェットエンジンを装備してきたのは、1970以降のことです。日本の場合は、特に航空機に占める軍用機生産高の割合が1980年、1990年、2000年でそれぞれ約80%,70%,60%でした。

このような状況で航空機産業は、1960年以降2000年に至る40年間は、防衛庁(自衛隊)向け航空機製造に関する品質保証、品質管理システムで運用してきた経緯があります。当然、同盟国である米国航空機メーカのライセンス生産又は共同開発がベースとなっていましたので、日本の航空機の品質保証、品質管理システムも米国航空機産業、それも軍用機をベースとして構築されてきました。

米国では、MIL-Q-5923CがMIL-Q-9858A(1963年)に置換され、航空自衛隊機では米国のMIL-Q-9858Aに合わせて、C & LPS Y00004品質保証共通仕様書(航空自衛隊仕様書1970年)となり、さらに陸・海・空自衛隊向け装備品に対する防衛庁仕様書である品質管理共通仕様書DSP Z 9001が誕生したのです。1979年のことです。 航空機産業での自衛隊向け生産高が80%以上を占めていた時代です。長く書いてしました。

本論の特殊工程管理に戻りましょう。防衛庁仕様書DSP Z 9001での特殊工程に関する要求事項は、次のようでした。

 DSP Z 9001 2.5.2 (3)特殊工程

(a)契約の相手方は、特殊工程について契約要求事項を満足するために、その状況に応じ 一般の作業工程に比し、より完全な作業指導書を作成すると共に、工程管理手順又は 工程仕様書並びに必要に応じ工程の処理及びその審査方法を規定するなど適切な維持・管理 を行わなければならない。(注記:契約の相手方とは、防衛庁から見ると供給者です。)

(b)契約の相手方は、外注業者の特殊工程について、その能力及び管理が十分であることを 保証しなければならない。

上記でもわかりますように、防衛庁は契約の相手側に対し、特殊工程管理についてサプライチェーンすべてにわたり厳格な管理を要求していたのです。

・顧客(防衛庁)→契約の相手方(プライム)→外注業者(供給者)

MIL-Q-9858Aでも当然、特殊工程管理について多くのスペースを割いて要求していますが、ここでは省略します。

ISO9001(1987年)制定により、世界的な品質管理、品質保証活動の流れは、品質マネジメントシステム認証制度へと移ってきたことは、周知のとおりです。ISO9001:1987版は、1994年に改訂されましたが、ともに要求事項の中には、「特殊工程」という条項で残されていたと思います(確約できませんが)。

その後、ISO9001は、2000年及び2008年に改訂されて、現在に至っています。この中で、7.5.2「製造及びサービス提供に関するプロセスの妥当性確認」の条項は、まさしく特殊工程に対する管理要求事項です。

米国では、元レーガン大統領の規制緩和策の一環として、MIL-Q-9858Aはもちろん、多くのMIL-Specが廃止となりました。MIL-Q-9858Aは1996年廃止により、米国航空機(軍用機を含む)に対する品質プログラム要求事項は、ISO9001に代替されることになりました。

しかし、ISO9001の要求事項では、航空・宇宙製品には緩すぎ、品質が確保されない恐れがあるということが議論され、AS/EN/JISQ9100が2000年に制定となりました。その後、改訂され現在のJISQ9100:2009になりました。

これに合わせて、防衛省規格DSP Z 9001, DSP Z 9002, DSP Z 9003は一本化され、2010年に,品質管理等共通仕様書DSP Z 9008として制定されました。 この中で、特殊工程という条項はありませんが、基本要求事項として、JISQ9100を引用していますので、JISQ9100の7.5.2「製造及びサービス提供に関するプロセスの妥当性確認」が要求されていることになります。

長々と記述してきましたが、航空・宇宙・防衛製品に対する「特殊工程への要求事項」は、製品に対する管理要求事項から、組織に対する品質マネジメントシステム要求事項に代わって来たということはありますが、本質的には1950年代から変わっていないということです。それは、特殊工程管理の重要性を物語っているからです。

次回、第3回では「なぜ特殊工程は、厳格な管理が要求されているか」について解説します。