1.建設機械の油圧機器クレームの事例 
なぜなぜ分析について事例で説明するとわかりやすいと思いますので、私の40年前の“体験”の事例で説明します。建設機械の油圧機器のクレームの根本原因調査と対策についてです。

1973年当時は、中東戦争による石油高騰、いわゆる第1次オイルショックによる物価の高騰とともに高度経済成長の終えんでもありました。不景気になり、ユーザーが経済成長期には3年で買い替えしていた建設機械を5年、6年間使用することとなったのです。そのことにより、それまでの“潜在的クレーム”が一機に吹き出しました。品質クレームの増大による採算の悪化をきたしました。

建設機械の油圧機器の採算改善・改革を本社主導のプロジェクトを立ち上げ、品質、コスト、そして競合他社等、戦略面から調査・検討することになりました。私は、航空宇宙の油圧機器品質保証担当であり、建設機械油圧機器の品質保証に携わっていませんでした。そのためにこのプロジェクトメンバーに命じられて、品質保証面からクレームの原因と対策を調査と提言するように命じられたのです。当時29歳でした。

 

2.事実(真因)の調査
(1)クレーム分析
数百のクレームから重大クレーム(金額、件数ワースト7)をまとめてみると、驚いたことに油圧機器の本体であるケース、作動油を各機器に分配する役目のディストリビューターなどが破壊するというクレームがワーストの上位を占めていました。

(2)信頼性解析

これを信頼性解析(ワイブル解析:使用時間の経過とともに故障件数の変化を解析)すると、さらに驚くことに短時間使用の部品でも摩耗故障による破壊であったのです。参考:50年前から建設機械にはアワーメーター(使用時間と故障の発生した時間がわかるように)が取り付けられており、信頼性解析ができたのです。

(3)真因の調査
破壊した部品を技術的な面から調査すると、①強度不足、②顧客仕様に記載されていない想定外の衝撃力(ウォーター・ハンマー現象)が加わって破壊していたことがわかりました。技術的な真因は明確になりました。

 

3.なぜなぜ分析
ここまでの調査は技術的な調査結果であり、この調査結果だけで是正処置を行なえば、①強度不足に対しては“強度を増す”、②顧客仕様に記載されていない想定外の衝撃力に対しては、“顧客仕様の変更を要請し、その上で衝撃に強い機器を設計する”ということになります。非常にまれに起こる軽度の故障で“偶発故障”で、油圧機器そして建設機械の機能に悪影響を及ぼさないようであれば、この対策で済ますこともあります。しかし、本クレームの“質”は、非常に重大なクレームであり、この調査で終わることはできません。根本原因を調査することにしました。

(1)ヒアリングによる調査
調査は、油圧機器設計者、開発試験担当者に直接ヒアリングすることです。なぜ強度不足、衝撃力に堪えられない油圧機器を設計したのか、開発試験で検出できなかったのかということを調査することです。

ヒアリング結果で判明したことは、①強度計算をせず容量の大小による相似則で形状等を設計、②耐久試験の途中で中止、③開発・試作品と量産品とで異なる材料(試作では鋼、量産では鋳鉄)使用、④お客様の仕様に衝撃力についての要求がない、⑤市場での建設機械(油圧機器を含む)の使われ方を知らない、ウォーター・ハンマー現象はコンクリート壁を壊すときに発生していた(想定していなかった)、等々のことが判明しました。

さらにその背景にあったのは、⑥設計・試験の時間がない、⑦建設機械の使用現場に出かけて使用状況を把握せずに設計・試験していたというものでした。⑥、⑦は当然関連しています。 また、建設機械には、航空機油圧機器のような品質管理、信頼性管理は不要という風潮もあったのです。

(2)風土の問題

上記のヒアリングを総合し、根本原因を次の整理・結論付けました。

  • プロダクトアウトの体質・・・高度経済成長時期の物を作れば売れる体質
    (マーケットインではない)
  • 開発プロセスの未整備・・・・設計標準、試験標準の未整備
  • 建設機械油圧機器と航空機油圧機器の並立工場の品質管理の運用の困難さ(人的資源投入等)

これは、まさに経営(マネジメント)の問題だったのです。

4.経営(マネジメント)の対策
経営の問題と判明しましたので、建設機械油圧機器事業トップへの説明・報告と経営対策・提言についても説明しました。