航空機産業における「一貫生産」の連載解説の初回にあたり、今まで主流であった「工程別生産」の実態、「一貫生産」への移行の背景及び狙いを説明します。

従来、国内大手航空機メーカーは部品(主に構造部品)の製造において、部品の製造工程・方法を自社内で検討・決定し(一般的には工程設計と呼ぶ)、決定された各製造工程を社内で担当する作業と社外に委託する作業に仕訳(Make/Buy仕訳と呼ぶ)する。その後、各製造工程を受け持つ、外注メーカーに素材、作業文書(作業工程表や作業指示書と呼ぶ)及び治工具を支給することになるが、素材は先ず、第1工程を担当する外注メーカーに行き、そこで第1工程の加工が完了すると、その加工済み品(仕掛製品)は航空機メーカーに戻る。航空機メーカーでの第1工程に対する検査が終了すると、次工程を担当する別の外注メーカーに渡り、そこで次工程加工を実施し、完了後にまた航空機メーカーに戻る。

以下、加工品は、工程数に応じて航空機メーカーと単一工程を受け持つ外注メーカーとの間を何回も行き来する。単一工程を受け持つ外注メーカーは“委託された加工のみ”を担当するだけでよく、部品の製造工程・方法や条件を検討・決定するという間接業務は基本的には不要である。これが、関係者が「ノコギリ発注」や「おんぶに・だっこ発注」と揶揄する、従来行われてきた「工程別生産」の実態である。「工程別生産」と「一貫生産」の違いを下図で確認して欲しい。

次に「工程別生産」から「一貫生産」への移行の背景と狙いを述べる。航空機生産の戦後再開以来、国内大手航空機メーカーは防衛需要を主体にして上記の「工程別生産」を活用してきた。製品の設計情報を基にして、作り方、必要な治具から製品材料まで全て親企業が準備し、委託先協力企業に与えて来た。このために大手航空機メーカーは親企業として、作り方を検討・設定する間接業務の体制を整備し、間接要員を抱えて来た。

年々の防衛予算の削減に伴い民間需要の拡大の必要性が拡大してきた。この民間需要の拡大・取り込みのためには、国際競争力の確保の観点からコストダウンが必要不可欠となり、直接の加工費は勿論のこととして間接費も削減の対象とせざる状況になった。また、防衛需要も例外ではなく、従来のコストでの製造が許されなくなって来たことは言うまでもない。このコストダウンの手段として考え出されたのが、「一貫生産」である。親企業たる国内大手航空機メーカーの狙いは、コストダウンにある。

実は、この現象は国内に限定されたことではない。国際的な航空機業界の巨人であるボーイングにおいても同様である。即ち、日本の大手航空機メーカーに対して、エアバスとの対抗上コストダウンがボーイングにとって必要不可欠である。そのため、日本企業が参画した767、777そして787と分担比率が増加していると同時に分担すべき間接業務も拡大する反面、コストに対する要求や保証は厳しくなって来ている。

次回(第2回)には、委託先としての企業に求められる機能(品質マネジメントシステムで言うプロセス)の全容に関して述べたいと思う。