第2回は、「一貫生産」を受注する委託先(受託)企業に求められる10の機能(品質マネジメントシステムにおける製品実現プロセス)の全容に関して紹介した。今回からこの10の機能について個別に解説する。今回は、「契約・受注機能」である。

委託先(受託)企業の製品実現プロセスの最初の機能(プロセス)が「契約・受注機能」であり、顧客とのコミュニケーションを図る重要な機能である。この機能は大別して以下の2つの機能で構成される。

  • 顧客の基本要求事項の確認、折衝及び契約締結
  • 個別製品要求事項の解読、不明事項等の確認及び図面・スペックの変更要請・調整

1.顧客の基本要求事項の確認、折衝及び契約締結

一般的に大手航空機メーカーが委託先との取引開始に当たって、「取引基本契約書」及びその付属書「品質マネジメントシステムに関する要求事項」を提示する。委託先の企業はこれら契約関連の文書を精読して、疑問事項や要望事項を抽出する。この抽出された疑問事項や要望事項を委託元であるメーカーに十分確認して折衝した上で、契約関連の文書に反映してもらう。この段階での注意事項としては、以下の事項が挙げられる。

  • 提示された契約関連の文書内容の精査には、営業部門のみではなく、経営層はもちろん、受注後に
    関連する製造部門や品質管理部門等の責任者も参加させる
  • 先をみた判断(戦略思考)を入れ、自社が“責任を持ってできること”と“できないこと”を仕訳して
    相手が親企業であろうとも遠慮無く、疑問事項や要望事項として文書で伝達する
  • 折衝した後、互いの合意事項は契約関連の文書に盛り込み・修正等で確実に反映する
  • 契約の相手が海外企業の場合には、契約文書の一字一句とも疎かにせずに精査する。
    相手は“契約社会の組織”であることを忘れてはならない

2.個別製品要求事項の解読、不明事項等の確認及び図面・スペックの変更要請・調整

ここでは、受託する個別の製品(構成部品が単一の単品と構成部品が複数ある組立品がある)の要求事項の明確化及びレビューを実施する。通常、契約締結をもって取引口座を開設した後、個別製品の要求事項は、図面及びそこから呼び出されるスペックによって顧客から指示される。この機能の遂行上の注意事項は以下の事項が挙げられる。

  • 図面及びスペックの要件を自社の設備・技術によって満たすことができるか確認する。
    できない場合には、変更要求(Deviation Request)を提出し、調整する
  • 図面及びスペック規定作業を自社内で実施できず、社外加工(外注)する場合には、
    その社外加工先の企業に十分検討してもらい、実行可能性を確認する
  • 海外企業の場合には、経済産業省の輸出手続きや国土交通省航空局の検査等の要求事項の
    確認と監督官庁との調整が必要となる
  • JISQ9100規格要求事項(7.2.2条項)である“製品に関わる特別要求事項の明確化”及び“リスクの
    特定”も忘れてならない

最後に「契約・受注機能」として必要不可欠な要素を挙げたい。それは変更管理及びコミュニケーションである。変更管理であるが、発生する変更は、顧客である委託元からの基本要求事項や個別製品要求事項の変更と受託企業である自社から委託元への個別製品要求事項の変更が考えられる。これら変更事項の確実な履行(製品への反映)のために確実な情報伝達が要求される。このためには、顧客とのコミュニケーション及び社内のコミュニケーションの仕組みの整備、即ち顧客調達部門と顧客との窓口部門(通常は営業部署)、及びその窓口部門と社内の関連部門(製造部署、購買部署、品質管理部署等)との確実な双方向の情報伝達の仕組みの確立が要求される。

次回(第4回)では、「工程設計機能」に関して解説する。